土鍋で炊いたご飯は、なぜあんなに特別感があるのでしょうか。
香り、立ち上る湯気、蓋を開ける瞬間の高揚感。
ただそれだけで、いつもの白米が「ご馳走」に変わります。
以前、土鍋ごはんを看板にしている飲食店で調理の手伝いをしていたことがあります。
その現場で何度も炊飯を任される中で身についた、失敗しにくく再現性の高い土鍋ご飯の炊き方を、
ここでは共有したいと思います。
ご飯を炊く土鍋の選び方
「土鍋」と一言で言っても種類はさまざま。
ご飯を炊くなら、いわゆるご飯専用土鍋が使いやすいのは確かです。
特徴は以下の通り。
- 底が深めで対流しやすい
- 中蓋が付いていることが多い
- 吹きこぼれをある程度防げる

この中蓋があることで、炊いている最中の吹きこぼれをある程度防いでくれます。
便利ですが、100%防いでくれるわけではないので、過信は禁物です。
よく「中蓋があることで圧力がかかって、ふっくら美味しくなる」といった説明を見かけますが、
正直その程度の重さでは圧力と呼べるほどの効果はありません。
そもそも中蓋には空気穴も開いていますし、体感できる違いはほぼないと思っていいです。
また、
「遠赤外線効果」「保温性が高い」
といった謳い文句もよく見かけますが、炊き上がりに劇的な差が出るほどではないというのが実感です。
結論としては、
- 見た目が気に入ったもの
- 重すぎず扱いやすいもの
- サイズに余裕があるもの
これで十分です。
おすすめの土鍋
おしゃれなセラミック製の土鍋もいいですが
個人的には、三重県の萬古焼(ばんこやき)のような、無骨で実用本位の土鍋は
使い込むうちにどんどん愛着が湧いてくるのでおすすめです。

これから説明する方法は、普通の土鍋でも同じように炊けるので安心してください。
ちなみに今回使うのはこちら
AKOMEYA TOKYO / 有田焼 黒釉 ごはん土鍋

お米の洗い方
お米の研ぎ方に「正解」はない
これまでいくつかの飲食店で働いてきましたが、
驚くほど米の研ぎ方はバラバラでした。
「水が澄むまでしっかり洗うべし」
「いや、研がずに流水で流せばいい」
「手で押しつけて擦り合わせるように洗え」
「最近のお米は精米技術が高いから、あまり洗わなくてもいい」
…などなど。
どれも一理あります。
結論から言うと、用途と好みで変えていいです。
このあと紹介するのは、あくまで“私なり”のやり方の一例です。
お米を洗う手順
👉 無洗米を使う場合はSTEP4から始めてください。
米は最初に加えた水を最も吸います。
軽く混ぜたら、ぬか臭さを含んだ水はすぐ捨てます。
また、米を研ぐ際は、重くて割れやすいので、土鍋ではなくボウル推奨です。

力を入れすぎず、一方向にジャリジャリジャリと。
この間にも米は吸水しています。手早く行いましょう。

1〜4合程度なら2〜3回で十分。
水が完全に透明になる必要はありません。

ここが最重要ポイントです。
目安は以下。
- 夏:20〜30分
- 冬:40〜60分
全体が全体が透き通った白から乳白色へ変わったら完了。
吸水しすぎると米が崩れるので注意。
こだわる人は、吸水させる水を浄水やミネラルウォーターにするといいでしょう。
ただ余程カルキ臭い水でない限りは普通に水道水で大丈夫です。

水分量を正確にするため、ザルで水を切ります。
ちなみに、この吸水したお米の状態でも1〜2日程度なら保存が可能です。
タッパーに移し、冷蔵庫に入れておけばOK。多めにお米を洗っておき、数日に分けて使うのもありです。

土鍋で炊く
土鍋に水気を切ったお米を入れます。写真は1合分です。

水を入れます。お米1合(洗い米200g)に対し、水170mlがベストな量です。
ちなみに土鍋に対して6割以上の米を炊こうとすると吹きこぼれて悲惨な目に遭うので、
余裕を持った量を炊いてくださいね。

中蓋(あれば)と蓋をして、加熱します。
火加減は「8~10分で沸騰する火力」です。

まあそんな繊細な火加減がすぐわかったら苦労しないと思いますので、
何度か試してみてください。コンロや土鍋によって変わります。
参考までに
お米1合〜2合:やや強めの中火
3合以上:強火
あたりがいいのではないかと思います。経験則で。

沸騰してくると蓋の縁から水が出てきます。
ここでしっかり沸騰させるのが重要です。沸騰までいかないと生煮えの原因になります。
湯気が出た程度では沸騰していない可能性が高いです。
1分くらい沸騰させていても問題ないので確信が持てるまでグツグツさせましょう。
「8~10分で沸騰する火力」と記載しましたが、8分未満で沸騰した場合でも、失敗ではないのでそのまま次の工程へいきましょう。次回火加減を弱めれば良いのです。
また「赤子泣いても蓋とるな」と昔から言いますが、沸騰してるか判断できない場合は蓋をとって確認するのはアリです。それだけ生煮えご飯は不味いです。

できるだけ弱火で。うっすらした火で、もはや保温かな?くらいの火力でOK
火が強いと底が焦げてしまいます。
このまま12分加熱します。
火を止め、10分蒸らします。
熱と蒸気が逃げてしまうので蓋は取らないでください。

美味しい土鍋ご飯の完成

芯までふっくら炊けた美味しいご飯ができていると思います。
炊き上がる時間は火にかけてから8分+12分+10分で30分なので、食事の時間から逆算して加熱し始めると良いでしょう。
土鍋のご飯が食卓に乗っているだけでテンションが上がるものです。
是非ご飯だけの味を噛み締めてみてください。

火加減が完璧なら基本的におこげはできませんが、
多少できるおこげもまた一興。
なぜかおこげって、テンション上がりますよね。

失敗しないための要点まとめ
- お米はしっかり吸水させる(吸水時間は気温で変える)
- お米1合(洗い米200g)に対し、水170mlがベスト
- 加熱し始めたら、8〜10分で沸騰する火加減
- しっかり沸騰していることを確認すること(生煮えに注意)
- 火からおろして10分しっかり蒸らす
最後に
ここまで土鍋ご飯を語っておいてなんですが、
土鍋で炊くと改めて思います。
炊飯器って、本当にすごい。
ボタン一つで安定して美味しい。
正直、味だけなら最新の炊飯器の方が上だと思います。
とはいえ、たとえ未来にどんな超高性能な炊飯器が登場しようと、
土鍋ご飯の魅力はまた別ものだと思います。
これはきっと、日本人のDNAに刻まれているものなんじゃないかなと思います。
そういう感覚も、料理の面白さですよね。
土鍋ご飯は、いつものお米をご馳走に変える調理法です。
手間はかかるけど、その価値は十分にあります。
気が向いたときで構いません。
ぜひ一度、ゆっくり炊いてみてください。
ご飯の見え方が、ほんの少し変わるはずです。


