
簡単にいうとラードは豚の脂身の事です。背脂たっぷりラーメン美味しいですよね。でも健康面ではどの程度まで大丈夫なのでしょうか?
この記事では、栄養士の視点からラードのメリットとデメリットを詳しく解説します。
自家製ラードの作り方も掲載しています。併せてどうぞ。
ラードってそんなに食べないと思うけど
家庭料理ではラードを直接使用する機会は少ないかもしれません。
ですが、外食産業ではその風味や調理特性から広く使用されています。例えば、とんかつやフライドチキンの揚げ油、餃子やハンバーグの具材、さらにはチャーハンや焼きそば、パンや肉まんなど、多岐にわたる料理に利用されています。


外食が多い人は特に注意が必要です。
ラードが使用される代表的な料理


ラーメン全般
さっぱり塩・醤油ラーメンでも浮いてる香味脂は大抵ラードです。豚骨ラーメンが濁っているのは水と脂(ラード)が乳化して混ざり合っているからです。背脂ラーメンは…言わずもがな。
餃子、チャーハン
餃子を焼くのはサラダ油かもしれませんが、中身の餡にはコクとジューシーさを出すためにラードが使われています。
チャーハンはお店によりますが、ラードで炒めると格段に美味しくなるため使っているところが多いです。
とんかつ、コロッケ
揚げ油にラードを使用しているところが多いです。ラードの方が酸化しにくく揚げ油としては優秀なんです。同時にコクと風味まで追加してくれます。ただとんかつにラードを使うようなお店は減ってきています。コスト的な問題で。
肉まん
肉まんの餡自体にコクを出すラードを使うのはもちろん、周りのパン生地にもラードが練り込まれています。基本的にパン生地には脂が練り込まれています。一般的はパンはバターやショートニングですが、中華の蒸しパン系はラードがメインです。
ちんすこう
沖縄のクッキーのようなお菓子ちんすこう。ちんすこうにはラードが練り込まれています。ちなみにそれをバターに変えれば普通のクッキーになります。
文化的にラードを多用するのは中華料理が多い
ラードの良い点・悪い点
ラードというと健康に悪いというイメージありますね。でもこれだけ使われるということは良い点もあるはずです。
良い点・悪い点をまとめてみました。
ラードの悪い点
食べすぎによるカロリー過多が、コレステロールや中性脂肪を増やす
ラードというと「悪玉コレステロール」や「中性脂肪が増える」といったマイナスイメージを持たれがちです。たしかにラードや牛脂、バターに多く含まれる飽和脂肪酸は、過剰に摂取すれば生活習慣病のリスク要因になります。
ですが、栄養士としてお伝えしたいのは、飽和脂肪酸自体が悪いわけではないということ。体にとって必要不可欠な脂肪酸であり、極端に避ければ、逆に脳卒中などのリスクが高まる可能性もあるのです。栄養は「摂り方」が大事。
ラードはとにかく美味しいので、ついつい使いすぎてしまいがち。結果として摂取カロリーが増え、それがコレステロールや中性脂肪の増加につながってしまう…というのが本質的な問題です。特に飽和脂肪酸は、知らず知らずのうちに過剰になりやすい栄養素でもあります。
ラードのコレステロールを吸収してコレステロール値が上がるわけではない
食べ過ぎによる肥満が原因
意外に思われるかもしれませんが、ラードに含まれるコレステロールを摂取しても体内のコレステロール値に影響はほとんどありません。コレステロールの摂取基準は今はもうありません。
詳しくはこちらの記事で。


ラードの良い点


植物性油より酸化しにくい
動物性脂肪では飽和脂肪酸が多く含まれており、構造的に安定していて酸化しにくくなっています。植物性油は不飽和脂肪酸が多く含まれており、これが熱・光・空気で酸化しやすくなっています。酸化した油は嫌な匂いがして、食べると胸焼け・吐き気の原因になります。
なのでサラダ油より熱に強く劣化しづらい=揚げ油や加熱調理に良い、といえます。
…とはいうものの、今どき揚げ油はサラダ油を取り替えながら使用するので、酸化した油を使うことなんてありません。毎日大量に使う専門店はともかく、一般家庭でこの酸化しにくい恩恵を受けることは少ないです。あまり気にしないで良いと思います。
お菓子をサクサクに「ショートニング性」
「ショートニング性」とは、小麦粉などのグルテン形成を阻害して生地をサクサク、ホロホロに仕上げる性質のことです。クッキーやパイ生地には欠かせません。バターで言われることが多いですがラードも該当します。
液体であるサラダ油ではこの性質はほとんど発揮されず、ラード、バター、ショートニングだけの特徴といえます。
…とはいうものの、基本お菓子はバター使いますよね。ラード使うお菓子は「ちんすこう」くらいしか思い当たらないです。
料理のコク、風味を引き出す
これだけ過剰摂取が問題になっているのに食べられているのは何故か。そう、美味しいからです。
使うだけで料理にコク、深みが出ます。ネギやニンニクの香りを移すこともできるので、応用も効きます。
デメリットを無視できるレベルの魅力があるのです。
結局、ラードはウマい。これが全て
どのくらいの量なら食べていいの?
とは言え、どのくらいなら食べてもいいのかは気になるところ。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、18歳以上の男女の飽和脂肪酸摂取の目標量を、総摂取エネルギーの7%相当以下としています。
参考:農林水産省「脂質の取り過ぎに注意」
具体的には、女性18~29歳の場合は1日の推定エネルギー必要量は2000kcalですのでその7%、140kcal以下なら大丈夫です。脂質は1gあたり9kcalなのでグラムに直すと15.6g、ラードに含まれる飽和脂肪酸量は100g中39 gです。
これを計算すると1日摂ってもいいラードの量は40gになります、があくまで計算上の話です。ラードだけ舐めて1日過ごす人はいません。
食品に含まれる飽和脂肪酸も考える必要があります。例えば、豚バラ肉100gあたりの飽和脂肪酸量は14.4g、バター1かけ10gあたりの飽和脂肪酸量は5gです。
豚バラ100gで1日の目標量15.6g中14.4gとかもう無理では…? ちなみに背脂とんこつラーメンの脂質は46gです。(参考:カロミル) 脂質が全部動物性脂肪というわけでは無いのですが…背脂ですし、ほぼラードですよね。上で計算したラード1日40gというのを超えてますね。女性のカロリーで計算してますが男性18~29歳でも2,650kclなので3割り増し、ラード52.8gが上限程度です。
1日ラードだけで脂質取るなら40g
動物性脂肪は現代の食事ではどうやっても過剰になる
結論:あまり使いすぎないようにしましょう
多く使っても1日大さじ1程度目安ですね。
ラード 大さじ1(約12g)
飽和脂肪酸:約4.4g
1日の目標量の28%
ラードとの美味い付き合い方
基本的にラードは摂り過ぎてしまう食品です。
目に見えなくても料理に混ぜ込まれていることが多いので、特に外食が多い人は注意しましょう。
ただ、料理の質を高めてくれる素晴らしい調味料であることも確かです。また、病的に全く摂らないとそれはそれで脳卒中のリスクが高まったりと、健康に悪いです。
何事もバランスよく摂取することが大切です。これらの知識を念頭に置き、メリット・デメリットを理解した上で楽しみましょう。




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