牛ほほ肉は、牛一頭からわずかにしか取れない希少部位でありながら、扱いづらさから家庭では敬遠されがちな食材です。筋が多く、そのまま焼くと硬くなってしまうため、調理法を間違えると本来の美味しさを引き出せません。
しかし、温度と時間を正しくコントロールすれば、牛ほほ肉は驚くほど柔らかく、とろみのある濃厚な味わいに変わります。
本記事では、低温調理器を使い85℃で長時間加熱する低温調理によって、牛ほほ肉のコラーゲンを活かしながら仕上げる方法を、理屈とともに解説します。
牛ほほ肉という部位について

牛ほほ肉は、牛一頭から左右で2つしか取れない希少な部位です。
よく動かす部位のため筋肉量が多く、そのまま焼くと非常に硬いという特徴があります。
クリスマスシーズンなどには、レストランやホテルで赤ワイン煮込み用として需要が集中し、品薄になることも珍しくありません。
牛は反芻動物で、日常的に咀嚼を繰り返すため、ほほ周りの筋肉が発達しています。その結果、筋やコラーゲンが多く、長時間の加熱によって真価を発揮する部位と言えます。
レシピ
牛ほほ肉といえば赤ワイン煮込みが定番ですが、今回は出汁を使った低温調理で仕上げます。
Anovaを使い、85℃で長時間加熱することで、筋を柔らかくしつつ、コラーゲンのとろみを活かすのが狙いです。
材料(1人分〜作りやすい量)
- 牛ほほ肉:1個(約400g)
- 合わせ出汁:150ml
- 薄口醤油:15ml
- みりん:15ml
※赤ワイン煮込みにする場合は、出汁の一部を赤ワインに置き換えても問題ありません。
下処理
牛ほほ肉は、一度沸騰した湯に短時間くぐらせます。
この工程は必須ではありませんが、行うことでアクが減り、煮汁が澄みやすくなります。
その後、密封できる耐熱袋に牛ほほ肉と調味料をすべて入れ、できるだけ空気を抜いて封をします。
低温調理の方法
低温調理器を85℃に設定し、12〜18時間加熱します。
85℃という高温かつ長時間なので、お湯が蒸発していきます。必ずラップなどで水面を覆ってください。
目安は12時間ですが、肉の大きさや個体差によってはまだ硬さが残ることがあります。
その場合は時間を延ばし、指で押して弾力を確認しながら調整してください。
仕上がりと食べ方
食べやすい大きさにカットし、煮汁を鍋に入れ火にかけ、煮詰めていきます。
ゼラチンの分解を抑えたいので、なるべく短時間で。
味付けはシンプルなので、付け合わせに大根や人参、じゃがいもなどの根菜を添えると、全体のバランスが取りやすくなります。
温度と時間の考え方
コラーゲンは、約65℃付近で一度硬くなり、75〜85℃で徐々に軟化していきます。
中の水分を残しつつコラーゲンを分解するため、低温調理では65〜70℃の長時間加熱というのもあります。
しかしこのレシピは85℃に設定しています。
狙いとしてはホロホロと崩れるような十分な煮込み感を出しつつ、コラーゲンをしっかり軟化させ、通常の煮込みでは加熱しすぎで分解してしまうゼラチン感を残す、というものです。
完成した煮込みを食べると、ゼラチンで唇がペトペトしてしまうほどです。
圧力鍋との違い
圧力鍋を使えば、数時間で牛ほほ肉を柔らかくすることは可能です。
ただし高温・高圧のため、コラーゲンはゼラチンを経てさらに分解されてしまいます。
- 栄養的には吸収しやすい
- 反面、コラーゲンのとろみやコクが感じられない
低温で長時間加熱する方法は、とろみと濃厚さを残せる点が大きな違いです。
まとめ
牛ほほ肉は扱いづらい反面、調理方法さえ合えば非常に美味しくなる部位です。
低温調理器を使った85℃・長時間加熱は、コラーゲンの旨みと食感を最大限に引き出す方法のひとつです。
赤ワイン煮込みとは違う、出汁仕立ての低温調理もぜひ試してみてください。


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