
土鍋で炊いたご飯は特別感があって美味しいですよね。
以前、美味しい土鍋ごはんを提供するお店でお手伝いしていた時の経験から、美味しい土鍋ご飯の炊き方をお伝えしようと思います。
米を炊く土鍋の選び方
土鍋とひと口に言ってもさまざま。ご飯を炊く場合はそれに特化した「ご飯専用土鍋」を使うのが良いでしょう。一般的な土鍋に比べて底が深く、「中蓋」が付いているのが特徴です。


この中蓋があることで、炊いている最中の吹きこぼれをある程度防いでくれます。
まあまあ便利ですが、100%防いでくれるわけではないので、過信は禁物です。
よく「中蓋があることで圧力がかかって、ふっくら美味しくなる」といった説明を見かけますが、正直その程度の重さでは圧力と呼べるほどの効果はありません。そもそも中蓋には空気穴も開いていますし、体感できる違いはほぼないと思っていいです。
また、市販されている土鍋には「遠赤外線効果でふっくら」「保温性が高い」など、いろいろな謳い文句が並んでいますが、実際のところ、それほど劇的な差はないというのが個人的な意見です。最終的には、見た目や使いやすさなど、自分が気に入ったものを選ぶのが一番です。
ただひとつアドバイスするとすれば、おしゃれなセラミック製の量産型土鍋よりも、日本の土鍋の約8割を占める三重県の「萬古焼(ばんこやき)」のような、昔ながらの無骨で頼れる土鍋を選ぶと、使い込むうちにどんどん愛着が湧いてくると思います。


これから説明する方法は、普通の土鍋でも同じように炊けるので安心してください。
100円ショップで買うような土鍋でも手順は変わりません。
ちなみに今回使うのはこちら
AKOMEYA TOKYO / 有田焼 黒釉 ごはん土鍋


お米の研ぎ方について
これまでいくつかの飲食店で働いてきましたが、驚くほど「お米の研ぎ方」はお店によってバラバラでした。
「水が澄むまでしっかり洗うべし」「いや、研がずに流水で流せばいい」「手で押しつけて擦り合わせるように洗え」「最近のお米は精米技術が高いから、あまり洗わなくてもいい」…などなど。
結論から言えば、やり方はひとつじゃありません。用途や求める仕上がりによって変えて良いと思っています。
このあと紹介するのは、あくまで“私なり”のやり方の一例。
自分にとってやりやすく、美味しく炊ける方法を見つけてください。
👉 無洗米を使う場合はSTEP4から始めてください。
米は吸水しやすく、特に最初の水分をいちばん吸収するそうです。なので数回手で混ぜたら、最初の米ぬかの匂いがついた水をすぐに捨てましょう。


ちなみに土鍋内で研いでも良いですが、破損の危険やそもそも重いので使いづらいです。ボウルで行うのが無難です。
水を捨てたら、手を鉤爪のように立て、一方向にグルグルとかき混ぜます。力を入れすぎないように。この間にも米は吸水しています。手早く行いましょう。


研いだら水で流します。お米1合〜4合程度の量ならこの工程を2〜3回繰り返せば大丈夫です。水が透き通るまで行う必要はありません。


お米が洗えたら、水を加えしっかりと吸水させましょう。芯のないふっくらとしたご飯にするのにとても重要です。
こだわる人は、吸水させる水をミネラルウォーターにするといいでしょう。ただ余程カルキ臭い水でない限りは普通に水道水で大丈夫です。
温度や米の状態、品種で吸水させる時間は変わります。
目安は
夏場:20〜30分
冬場:40〜60分
の時間吸水させてください。
画像のように、全体が透き通った白から乳白色の白へ変わったら完了です。吸水させすぎると米がボロボロ崩れていくので注意。


しっかり吸水できたら一度ザルで水を切りましょう。このあと水分を計量するのに計算が合わなくなってしまいます。


ちなみに、この吸水したお米の状態でも1〜2日程度なら保存が可能です。
タッパーに移し、冷蔵庫に入れておけばOK。多めにお米を洗っておき、数日に分けて使うのもありです。
土鍋で炊く
土鍋に水気を切ったお米を入れます。写真は1合分です。


水を入れます。お米1合(洗い米200g)に対し、水170mlがベストな量です。
ちなみに土鍋に対して6割以上の米を炊こうとすると吹きこぼれて悲惨な目に遭うので、余裕を持った量を炊いてくださいね。


中蓋(あれば)と蓋をして、加熱します。火加減は8~10分で沸騰する火力です。


まあそんな繊細な火加減がすぐわかったら苦労しないと思いますので、何度か試してみてください。コンロや土鍋によって変わります。
参考までに
お米1合〜2合:やや強めの中火
3合以上:強火
あたりがいいのではないかと思います。経験則で。


沸騰してくると蓋の縁から水が出てきます。
ここでしっかり沸騰させるのが重要です。沸騰までいかないと生煮えの原因になります。
湯気が出た程度では沸騰していない可能性が高いです。1分くらい沸騰させていても問題ないので確信が持てるまでグツグツさせましょう。
「8~10分で沸騰する火力」と記載しましたが、8分未満で沸騰した場合でも、失敗ではないのでそのまま次の工程へいきましょう。次回火加減を弱めれば良いのです。
また「赤子泣いても蓋とるな」と昔から言いますが、沸騰してるか判断できない場合は蓋をとって確認するのはアリです。それだけ生煮えご飯は不味いです。


できるだけ弱火で。保温かな?くらいの火力でOK
火が強いと底が焦げてしまいます。
このまま12分加熱します。
火を止め、10分蒸らします。
熱と蒸気が逃げてしまうので蓋は取らないでください。


美味しい土鍋ご飯の完成


芯までふっくら炊けた美味しいご飯ができていると思います。
炊き上がる時間は火にかけてから8分+12分+10分で30分なので、食事の時間から逆算して加熱し始めると良いでしょう。
土鍋のご飯が食卓に乗っているだけでテンションが上がるものです。
是非ご飯だけの味を噛み締めてみてください。


火加減が完璧なら通常おこげはできないのですが、卓上コンロの弱火がやや強かったせいでちょっとおこげができてしまいました。これはこれで良し。ところでなんでおこげってテンション上がるんでしょうね?


重要なポイントまとめ
- お米はしっかり吸水させる(吸水時間は気温で変える)
- お米1合(洗い米200g)に対し、水170mlがベスト
- 加熱し始めたら、8〜10分で沸騰する火加減
- しっかり沸騰していることを確認すること(生煮えに注意)
- 火からおろして10分しっかり蒸らす
最後に
ここまで土鍋ご飯の魅力を語っておいてなんですが――土鍋で炊いてみると、改めて「炊飯器って本当にすごいな」と感じます。ボタンひとつで失敗なく炊けるし、最近の高性能炊飯器は本当に美味しい。正直、土鍋ご飯より美味しいと個人的には思っています。これも企業努力の成果ですね。
とはいえ、たとえ未来にどんな超高性能な炊飯器が登場しようと、土鍋ご飯の魅力はまた別もの。理屈じゃなく、心に響く美味しさがあります。これはきっと、日本人のDNAに刻まれた「原風景」みたいなものなんじゃないかなと思います。そういう感覚も、料理の面白さですよね。
土鍋ご飯は、いつものお米をご馳走に変える調理法です。手間はかかるけど、その価値は十分にあります。
気が向いたら、ぜひ一度試してみてください。ちょっとだけご飯の見え方が変わるかもしれません。
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