イスラム陶器とは

イスラム陶器とは、7世紀以降のイスラム世界で発展した陶芸を指します。
アラビア半島から中東、ペルシャ(イラン)、エジプト、スペインまで広がり、中国陶磁の影響を受けつつ独自の技法を発展させました。
特にラスター彩や錫釉などの革新的な技術は、後にヨーロッパのマジョリカやデルフト焼、さらには世界各地の陶磁文化に大きな影響を与えました。
イスラム陶器の魅力

イスラム陶器の魅力は、独特の色彩表現と文様美にあります。
- ラスター彩陶器:金属酸化物を使い、金属光沢を持つ虹色のような表現。9世紀のイラク・サーマッラーで誕生。
- 錫釉陶器:錫を混ぜた釉薬で白い不透明な下地を作り、色絵を映えるようにした技法。後のマジョリカやデルフトの基盤に。
- 幾何学模様やアラベスク文様など、イスラム美術特有の抽象的なデザイン。
- 鮮やかなコバルトブルー、ターコイズブルーの釉薬。
これらは宗教的に偶像崇拝が避けられたため、幾何学や植物文様に特化した装飾性を生みました。
イスラム陶器の弱点と扱い方
イスラム陶器は美しい一方で、実用よりも装飾性が重視される場合が多かったため、日常の器としては弱点もあります。
- 陶器(多くは錫釉陶器)であり、磁器より強度が低い
- 錫釉やラスター彩は摩耗やひびに弱く、退色もある
- 骨董品は脆く保存が難しい
扱い方のポイント
- アンティークは鑑賞用として取り扱うのが基本
- 保存は湿度や直射日光を避ける
- 現代復刻品は日常使いできるが、手洗い推奨
現代のイスラム陶器

現在もイラン(カシャン、イスファハン)、エジプト、モロッコなどで伝統を引き継いだ陶器が作られています。特にモロッコのフェズ陶器やチュニジアの青と白の器は観光土産として有名です。
また、ラスター彩や錫釉の技法は、現代陶芸作家による再解釈や美術作品としても注目されています。
まとめ
イスラム陶器は、ラスター彩や錫釉など革新的な技法によって世界の陶磁史に大きな影響を与えました。
幾何学模様やアラベスクに象徴される装飾美は独自性を持ち、ヨーロッパのマジョリカやデルフト、日本の染付文化へと連なっています。
まさに「東西をつなぐ陶器」として、今なお芸術的価値を放ち続けています。


