粉引とは

粉引(こひき)とは、陶器の素地に白い化粧土(泥)をかけ、その上から透明釉を施す技法で作られる器のことです。
名前の由来は「粉を引いたように白い器」からとされ、別名「粉吹(こふき)」とも呼ばれます。
この技法は朝鮮から日本に伝わったといわれ、白い陶土が採れない土地でも白い器を作ろうと工夫した結果生まれたとも考えられています。
粉引の魅力

粉引の器が好まれる理由は、そのやさしく温かみのある白色にあります。
白磁のような純白ではなく、素地の土の色がところどころ表れ、ほんわりとした独特の風合いが出るのが特徴です。
- やわらかな白の色合い
- 手になじむ素朴な質感
- 渕からのぞく土の色や、釉薬のムラがつくる景色
これらが粉引ならではの魅力であり、多くの作家や愛好家に支持されてきました。
粉引の弱点と扱い方

一方で、粉引には弱点もあります。
素地と釉薬の間に白泥の層があるため、通常の陶器より割れやすい傾向があります。
また吸水性が高く、水じみやシミがつきやすいことも知られています。
かつては「雨もり」という愛称までありましたが、これは使ううちにできる染みや変化を「味わい」として楽しんできたことを表しています。
伝統的なケア方法
- 購入後に「目止め」を行う(お粥で炊くなど)
- 使用後は水に浸けっぱなしにせず、しっかり乾燥させる
現代の改善
近年はシミや水じみがつきにくい処理剤も開発され、丹波焼など多くの作家が導入しています。従来ほど神経質にならずに使える粉引の器も増えています。
現代の粉引

現代の粉引は、伝統的な温かみのある風合いを残しながら、実用性が向上してきています。
多少のシミや変化も「育てる器」として魅力のひとつ。今も多くの作家が粉引の器を制作し、食卓をやさしく彩っています。
まとめ
粉引は「白い器を求める工夫」から生まれた、日本らしい陶器の技法です。
やさしい白と素朴な質感は、他の焼き物にはない魅力を放ちます。割れやすさやシミといった弱点もありますが、それを含めて楽しむのが粉引の魅力ともいえます。
日常の食卓に取り入れれば、料理をやさしく引き立て、使うほどに味わいを増していく器です。


