スリップウェアとは

スリップウェアとは、素地の上に「スリップ」と呼ばれる泥漿(でいしょう=粘土を水で溶いたもの)を施し、模様を描いて装飾した陶器のことです。
イギリスで17〜18世紀に盛んに作られ、庶民の日常食器として広く使われました。アメリカ植民地やヨーロッパ各地にも伝わり、素朴で力強い民衆陶器として評価されています。
スリップウェアの魅力

スリップウェアの魅力は、泥漿で描かれる自由な文様と温かみにあります。
- スリップを絞り出して線を引く「トレイリング」
- スリップをかき混ぜて模様を作る「マーブル」
- 幾何学、植物、文字など多彩なデザイン
- 素朴で大胆な模様が器全体を彩る
どこか牧歌的で温かみのある風合いは、現代でも根強い人気を持っています。
スリップウェアの弱点と扱い方

日常食器として発展したスリップウェアですが、特徴的な注意点もあります。
- 陶器なので磁器より強度が低い
- 表面装飾が摩耗しやすい
- 古い作品は釉薬が薄く、吸水性が高い場合もある
扱い方のポイント
- 現代作は普段使いできるが、強い衝撃や急激な温度変化は避ける
- 骨董品は飾りとして扱うのが無難
- 装飾面はやわらかいスポンジで優しく洗う
現代のスリップウェア
現代陶芸家の間でもスリップウェアは再評価されており、日本でも作家によるオリジナルのスリップウェアが人気を集めています。特に益子や信楽などの民藝の流れをくむ作家たちが制作し、展示会やクラフトフェアで注目されています。
伝統的な黄色や褐色の素地に白・黒の模様だけでなく、現代的な色使いや形と組み合わせた作品も増えています。
まとめ
スリップウェアは、泥漿を使った装飾技法によって素朴で大胆な模様を描く陶器です。イギリスを中心に庶民の生活を彩り、現在では民藝やクラフトの文脈で再評価されています。
自由で温かみのある表現は、日常の食卓にもアートとしての鑑賞にも適した魅力を持ち続けています。


