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精製塩と天然塩、正直どれも同じ?味の違いをプロ視点で語る

2025 12/13
栄養学 ミネラルについて 調味料について 調理学 食品学
塩 調理学
December 13, 2025
関口アキラ

「精製塩はただしょっぱい」
「天然塩は旨みがあって美味しい」

こんな話を聞いたことがある人は多いと思います。
塩売り場に行くと、天然塩や岩塩がずらりと並び、
どこか“良さそう”な雰囲気をまとっていますよね。

では実際のところ、
精製塩と天然塩に、はっきり分かるほどの味の違いはあるのでしょうか?

研究結果と調理実験、そして現場での実体験をもとに、
栄養士と調理師をもつ筆者が両視点で、この疑問をできるだけ冷静に整理してみます。


目次

科学的に見ると、塩の味はほぼ同じ

Image by PublicDomainPictures from Pixabay

まずは研究結果から。

2009年、英国の科学雑誌 Nature では、
一般的に使用されている塩は化学組成がほぼ同じであり、
味に有意な違いはない という結論が示されています。

また、2013年の米国の科学雑誌 PLoS One でも、
異なる種類の塩の味について、
ほとんどの人が区別できなかった という結果が報告されています。

どちらの研究も共通しているのは、
「塩の成分差はごくわずかで、味として認識できるほどではない」
という点です。

成分的に見れば、主成分はどの塩もほぼ塩化ナトリウム。
この結果は、ある意味とても納得がいきます。

……まあ、イギリスとアメリカの研究なので
「塩の繊細な味の違いなんてわかるのか?」と思う人もいるかもしれませんが。


料理にすると、塩の違いは残るのか?

では、日本の研究ではどうでしょうか。

「各種食塩の調理に及ぼす影響」
(松本仲子・三好恵子・杉田光代/J-STAGE)

という研究では、複数の塩を使った調理実験が行われています。

この研究で興味深いのは、

  • 塩単体では、わずかな味の違いが認められた
  • 旨味成分を加えると、塩の違いによる差は消えた

という結果です。

つまり、
料理として完成した状態では、どの塩を使ってもほぼ同じ
という結論になります。

ただし、この研究で比較されている塩が
「食塩」「精製塩」「並塩」「漬物塩」「赤穂の天塩」
と、やや似通ったラインナップなのは少し気になるところ。チョイスミスでは?

調理技術や再現性まで含めた実験は、今後さらに突っ込んだ検証があってもいい分野だとは感じます。


実際に食べ比べると、どう感じるか

Image by StockSnap from Pixabay

一方で、個人的な体験として。

塩の専門店で、さまざまな種類の塩をそのまま舐め比べる 機会がありました。
(都内にありましたが今は沖縄に移転してしまいました。。)

10種20種と舐め比べると、確かに違うと感じる塩はありまし、個性も感じます。ただし、その数は多くありません。

ほとんどの塩は「まあ、同じだな」という印象で、
たまに「あ、これは違うかも」と感じるものがある程度。
天日塩が美味しいと思う商品が多かったです。

最近美味しいと思ったお塩はこちら。案件ではなく単なるリンクなのでお気軽に。
天然塩 | 西伊豆ところてんの盛田屋 伊豆盛田屋の完全天日塩がおすすめ。


塩は成分よりも「物理」だ

Image by Iren from Pixabay

塩は成分だけでなく、粒の大きさや形状にもさまざまな違いがあります。

たとえば、

  • 粉状
  • 粒状
  • フレーク状
  • 大粒
  • かたまり

といった具合です。

こうした形状の違いによって、
口の中での食感や溶けるスピードが変わり、それが味の感じ方に影響します。

  • 粒が小さいほど、素早く溶けて塩味が立ち、シャープに感じやすい
  • 粒が大きいほど、溶けるまでに時間がかかり、食感が加わって角の取れた塩味に感じやすい

ただし、塩を液体に溶かしてしまうと、
こうした食感や溶け方の違いはほとんど意味を持たなくなります。

そのため、塩の個性を活かしたい場合は、
スープや煮込みではなく、
仕上げに振りかける、あるいは添える塩として使うのがおすすめです。

プロの現場ではどうなのか

Image by Sang Hyun Cho from Pixabay

仕事柄、これまで10を超える飲食の現場を見てきましたが、
日常的な調理に使われているのは、ほとんどが精製塩です。

プロの現場で重視されるのは、塩の“キャラクター”よりも、
次のような使いやすさです。

  • 食材に均等にまぶせるか
  • 振ったときに、毎回ほぼ同じ量が出てくるか

調理では再現性やスピードが何より重要になります。
そのため、粒の大きさが安定していてサラサラと扱える精製塩は、
非常に都合がいいのです。

旨味やコク、雑味といった要素は、
だし・肉・野菜・発酵食品など、他の食材で表現するのが基本。
塩には、塩分としての役割以上のものを求めていません。


一方で、
天ぷらや肉料理などの「仕上げ」や「添える塩」には、こだわる店が多いのも事実です。

たとえばステーキに、
フレーク状の塩や粒の大きな岩塩をあえてまばらに振ることで、
一口ごとに塩味の強さが変わり、味にグラデーションが生まれます。

また、こうした塩は料理に直接つけて食べることで、
塩そのものの風味や食感を感じやすくなります。

味付けが塩のみの料理なんかだと、スープなどでもこだわる場合が多いですね。


つまり、プロの現場では

  • 普段の調理には精製塩
  • 仕上げや提供時のみ、用途に応じて塩を使い分ける

という使い方が、ごく自然に行われているというわけです。


まとめ

このテーマについては、立場によって結論が分かれると考えています。

研究結果として分かっていること

  • 科学的には、塩の味の違いを人が明確に判別するのは難しい
  • 旨味成分を含む液体に溶かすと、塩の違いはほぼ分からなくなる

現場感覚・体感として言えること

  • 塩は製法や産地によって、確かに味の違いがある
  • 味付けが「塩だけ」の場合、その違いは感じやすくなる

もちろん、研究結果についてツッコミどころがないわけではありません。
アメリカ人やイギリス人を対象にした官能試験に、
日本人の味覚をそのまま当てはめていいのか、という疑問は残ります。

また、
「食塩」「精製塩」「並塩」「漬物塩」「赤穂の天塩」といった、
比較的個性の近い塩同士での実験結果を、
すべての塩に当てはめていいのか、という点も気になるところです。

一方で、現場側にも注意点があります。
「天然塩は体に良くて美味しいはずだ」と、
根拠なく思い込んでしまっているケースも少なくありません。

精製塩と本当に違いがあるのか、
一度フラットな状態で食べ比べてみる価値はあるはずです。


最後に

「違いなんてないだろ」と思っている人は、
実際に食べ比べると、意外と違いがあることに気づき、

「塩の味が分からないのか」と思っている人は、
比べてみると、意外と大差ないことに気づく。

そのくらいの距離感が、
塩と付き合うにはちょうどいいのではないでしょうか。

参考文献・資料

  • Nature(2009)
  • PLoS One(2013)
  • 松本仲子ほか「各種食塩の調理に及ぼす影響」J-STAGE
栄養学 ミネラルについて 調味料について 調理学 食品学
塩 調理学

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この記事を書いた人

関口アキラのアバター 関口アキラ 管理人

調理師、栄養士、フードスタイリスト、カメラマン。「食」にまつわる幅広い分野で活動中。飲食店の立ち上げやメニュー開発、料理撮影、メニューデザインなど多様な現場に携わる。
食の楽しさを伝えるメディア「趣食研究所」を運営し、記事の執筆・撮影・編集を一貫して手がける。科学的根拠に基づいた発信を大切にしています。
http://se-akira.com/

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