菜の花といえば、春を感じさせる旬野菜の代表格です。
ほろ苦さと鮮やかな緑色から「体に良さそう」というイメージを持つ人も多いでしょう。
菜の花ですが、「花菜(はなな)」「菜花(なばな)」「かき菜」「アブラナ」など多くの呼び名もあります。
これらも同一の野菜なのでしょうか。
この記事では、栄養士が菜の花の説明から栄養を主要な野菜と比較しながら整理し、その魅力を確認していきます。
そもそも「菜の花」という植物はない
実は、植物学的に「菜の花」という単独の種は存在しません。
菜の花とは、アブラナ属の野菜が花をつけた状態の総称です。
アブラナ属にはミズナ、カブ、コマツナ、ハクサイ、チンゲンサイ、ダイコン、キャベツ、ブロッコリーのような身近な野菜が含まれます。これらはいずれも、開花するとよく似た黄色い花を咲かせます。

私たちがスーパーで「菜の花」として購入しているものの多くは、
在来種のアブラナやセイヨウアブラナ(ナタネ)の食用品種です。
ここで名称について整理します。
- 「アブラナ(油菜)」:弥生時代から利用されてる野菜の品種。現在では多数の品種がある
- 「菜の花」:アブラナ属の野菜が花をつけた状態の総称、食用でないものも含まれる
- 「菜花(なばな)」:一般的には食用のアブラナ全般のことを指す
- 「花菜(はなな)」:京都での呼び方。蕾の状態の食用菜の花のことを言う
- 「かき菜」:北関東地方で育てられてきた在来アブラナの変異種
総称や品種など混ざってしまいましたが、要はそれだけ昔から利用され、種類が多く、一つに絞れないと言うことです。
思い描いている「菜の花」はどれ?
「菜の花」は昔から存在し、かつ自然交雑しやすいため、
皆さんがイメージする「菜の花」は多少違っているかと思います。
柔らかくて癖がない品種、茎が太く硬めな品種、葉が大きい品種、花が咲いていても柔らかい品種、
在来種の和種ナバナの品種か、西洋から来た洋種ナバナの品種、
といった具合に、同じ「菜の花」でも品種・地域によって特徴が違う野菜だと言えるでしょう。
アブラナとして売っている商品の方が多いかもしれません。
この後も解説していきますが、これらの問題があるためちょっと数値が違うこともありますが
大枠の特徴は合っているのでご安心ください。
旬は1月〜3月

菜の花・アブラナの旬は品種や産地にもよりますが、出荷のピークは1月〜3月頃です。
地域によっては11月から流通し始め、条件が合えば5月頃まで見かけることもあります。
なお、3〜5月にかけて花が咲いたものも食べることはできますが、一般的には開花が進むほどやわらかさなどが落ちる傾向にあります。食べることを考えると、蕾が締まった時期が最もおすすめです。

ですが、花の咲いた菜の花のおひたしも綺麗でいいものですよね。
菜の花の基本的な栄養成分
菜の花は緑黄色野菜に分類されます。
これはβカロテンをはじめとする抗酸化成分を一定量以上含む野菜の区分です。
あまり知られていませんが、一般に使われていて栄養豊富な野菜ランキングでは
和種ナバナは3位、洋種ナバナは8位と栄養豊富な野菜なのです。
参考:2014年2月16日 第11回 ~ 講演「菜の花と新しいダイコンのお話」 (独)農研機構 野菜茶業研究所 野菜生産技術研究領域 石田正彦氏
主な特徴としては、
- βカロテンが豊富
- 葉酸が多い
- ビタミンCを含む
- カルシウム・食物繊維も比較的多い
といった点が挙げられます。
他の主要野菜と栄養を比較してみる
100gあたりで見た場合、菜の花は次のような位置づけになります。
| 栄養素 | 菜の花 | 小松菜 | ブロッコリー |
|---|---|---|---|
| βカロテン | 2,200 µg | 3,100 µg | 900 µg |
| 葉酸 | 340 µg | 110 µg | 210 µg |
| ビタミンC | 130 mg | 39 mg | 120 mg |
| カルシウム | 160 mg | 170 mg | 38 mg |
| 食物繊維 | 4.2 g | 1.9 g | 5.1 g |
参考値:食品番号06201 野菜類/(なばな類)/和種なばな/花らい・茎/生
- βカロテン
小松菜ほどではないものの、緑黄色野菜として十分な量。 - 葉酸
葉物野菜の中でもトップレベルで多い。ほうれん草(210µg)よりも多い。 - ビタミンC
葉物野菜としては多め。ブロッコリーと同じかそれ以上。 - カルシウム
小松菜ほどではないが、野菜としては上位。
このように、菜の花は
野菜としてはトップレベルの葉酸の含有量をもち、
他の栄養素も全体的に高水準でまとまっているのが特徴です。
栄養をできるだけ活かす食べ方・調理のコツ

栄養士目線の調理のコツ
菜の花の栄養を活かすうえで注意したいのが加熱時間です。
- ビタミンC
- 葉酸
はいずれも水溶性で、茹ですぎると流出しやすい栄養素です。
実際、葉酸は生の状態で100gあたり340µg含まれますが、茹でると190µgまで落ちます。
参考:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
下茹でする場合は、「沸騰した湯で短時間」を意識すると、栄養の損失を抑えられます。
蒸す・電子レンジは葉酸の損失が少ない調理法ですが、アク抜きの意味合いもあるのでお湯で茹でた方が美味しく食べられます。苦味の少ない品種の菜の花・アブラナは電子レンジでも良いでしょう。
参考:別表12 食品中の葉酸の調理による残存率: 農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)
おすすめ調理例
- さっと茹でておひたし
最もシンプルで、菜の花の栄養と風味を活かしやすい。 - オイルと合わせる
βカロテンは脂溶性のため、油と一緒に摂ることで吸収率が向上します。
料理人目線での調理のコツ
基本的にはサッと加熱するのが美味しさも栄養素も損なわないと言うのは同じです。
が、菜の花の美味しさを活かす調理法として「ドロドロになるまで煮込む」と言うのもお勧めしたいです。
鶏肉のトマト煮込みを作るようなイメージで鶏肉(できれば骨付き)・出し汁・細かく切った菜の花を30分〜1時間じっくり煮込みます。
鶏肉が柔らかくなり、菜の花がドロドロに溶けてソース上になればできあがり。
青臭さがなく、菜の花の甘味と風味を感じることができる調理法です。
パスタソースとして茹で汁ごと食べれば、流出した栄養素も摂ることができます。
こんなイメージ:菜の花をくたくたに煮たオレキエッテ。dancyu
菜の花はどんな人におすすめ?

菜の花は、特に次のような人に向いています。
- 妊婦さん
葉酸を食品から無理なく摂取できる。 - 野菜不足を感じている人
少量でも栄養密度が高い。 - 冬〜春の季節の変わり目に体調を崩しやすい人
抗酸化栄養素とビタミンを同時に補給しやすい。
菜の花のおひたし1食分に含まれる栄養素
1食分を茹でた菜の花を70gとして計算しました。
| 栄養素 | 含有量 | 推奨量 | 充足率 |
|---|---|---|---|
| 葉酸 | 130 µg | 240 µg | 54% |
| ビタミンC | 31 mg | 100 mg | 31% |
| ビタミンE | 2.0 mg | 6.0 mg | 33% |
| ビタミンK | 180 µg | 150 µg | 120% |
| βカロテン | 1700 µg | (目安) | ― |
葉酸は130µgです。葉酸の1日の推奨量240µgなので1食で半分満たすことになります。
妊活中や妊娠初期の方の推奨量は640µgなので積極的に食べたい食品です。
ビタミンKは血液凝固、骨代謝に関与します。1食で1日の120%を補給できます。
葉物野菜の中でもトップクラスで、菜の花最大の強み。
菜の花は、ゆで調理後でもビタミンKと葉酸を中心に栄養価が高く、栄養効率の良い野菜です。
まとめ

菜の花は、他の主要な緑黄色野菜と比べても
葉酸・ビタミンC・カルシウムなどをバランスよく含む高栄養野菜であることが確認できます。
葉酸は葉物野菜の中でもトップクラスで、βカロテンやカルシウムも一般的な葉物以上の水準です。
また、ゆでることによって水溶性栄養素(葉酸やビタミンC)は減少しますが、脂溶性栄養素(βカロテンやビタミンK)は比較的安定したままです。調理法によって栄養価の損失を最小化する工夫が効果的です。
菜の花は、春の短い旬だからこそ、効率よく栄養を補える季節の恵みと言えます。


