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3Dフードプリンターに未来が感じられない理由 | フードスタイリストの立場から

2026 1/09
January 9, 2026
関口アキラ

3Dフードプリンターは「食の未来」として紹介されることが多い技術です。

以前仕事で、3Dフードプリンターの会社からアイデアを求められたことがあります。
個人的にも興味あるので、良いアイデアを提供していっちょ第一人者になりますか!
と思ってしばらく考えてみたものの、見えてきたのは「限界」でした。

この記事では私が思う3Dフードプリンターの限界と未来について書いていきたいと思います。


目次

3Dフードプリンターとは

3Dフードプリンターは、食材をペースト状にしたものをノズルから射出し、
パソコン上で作成した形状データに沿って食品を成形する装置です。

理論上は、さまざまな食材を組み合わせ、自由な形を作ることができるプリンターです。

chatGPT Image

よく挙げられる例として、肉の赤身と脂身をバランスよくプログラムして組み合わせることで、
任意の霜降り肉を作ることができる、という説明があります。

大阪万博では、3Dフードプリンターで作られたお寿司が振る舞われました。
こうした点から、3Dフードプリンターは、まさに未来の食を作り上げるにふさわしい発明だと言えるでしょう。

3Dフードプリンターの問題点

……と、よく言われるのが上記のような内容です。
しかし実際のところ、メーカーが頭を抱えているのは「活用方法を見出せないこと」です。

「え? 霜降り肉とかお寿司とか作れるんじゃないの?」
いいえ、そんなに簡単には作れません。私がレシピを考案する際に感じた難しい点をまとめました。

①材料はペーストでなければいけない

ノズルから射出する都合上、固形物では詰まってしまいます。かといって液体では流れてしまいます。
滑らかなペースト状であることが絶対条件なのです。

ペーストにした赤身肉と脂身を合わせたものを焼くと、霜降りステーキができるでしょうか?
いいえ、完成するのはハンバーグです。残念。

では、3Dフードプリンターで作る寿司ネタについてはどうでしょうか。
魚のすり身なので、かまぼこのような仕上がりになるそうです。無念。

②食感が同じになる

ペースト状であることに付随する問題ですが、食感の差を出しづらいという点があります。

例えば肉を作る場合、赤身の弾力、筋の歯応え、脂身の溶け加減などが重要ですが、
ペーストにすることで、それらがすべて同じになってしまいます。

③製造に時間がかかる・大量生産ができない

3Dプリンターは、どんな形でもその都度作ることができるのがメリットです。
逆に言えば、その都度しか作れないとも言えます。まとめて制作するのが苦手です。

さらに、ひとつ作り上げるのに数時間〜十数時間かかることも珍しくありません。
衛生面の問題もあるため、温度管理や保存料は必須になります。

④導入コストが高い

よく介護食に最適と言われますが、コストの問題が大きく立ちはだかります。

一般にも販売されている「FOODINI 2.0」は、約178万円でした(2026年1月現在)。
加えて、食品をなめらかなペースト状にするための機器も必要になります。

⑤大体のアイデアが「型」で可能

活用アイデアを考えるうえで、もっとも悩んだ問題がこれです。
「好きな形の食品が作れる!」と言われますが、それなら型を使えばよくないですか?
型のほうが細かい造形ができますし、一度に複数個作ることもできます。

3Dプリンターでしか不可能な造形も確かに存在しますが、
食品においてそれが必要になる場面は、ほとんどありません。

また、素材を細かく入り組むように構築することもできますが……
それが必要な食品が、果たしてあるのでしょうか。

3Dフードプリンターが活きる場面

①チョコレートの造形

ペースト状であり、冷えると固まる、という性質は3Dプリンターの材料にぴったりです。
さらに、そのまま食べることができ、価格も付けやすいという点で、「このためにあるのでは」と思うほど相性の良い素材です。

実際、チョコレート専用のフードプリンターも数多く販売されつつあります。

②フードロスの対策・余った食材の活用

ペーストにするということは、元の形状がどのような食材でも問題ない、ということでもあります。
規格外の野菜や、余剰分のお米など、余っている食材を無駄なく活用できる可能性を秘めています。

まあ、それもアイデア次第ではありますが……。

3Dフードプリンターの活用アイデア

そんなことを言いつつも、新しい技術は好きなので、なんとか活用方法を考えてみました。
メリットである「層を自在に作れる」という点に着目しています。

新しい食感のパイ生地の開発

chatGPT Image

小麦粉の生地とバターを折り重ねて層にしたものが、パイ生地です。
この「層を作る工程」に3Dプリンターを活用すると、どうでしょうか。

たとえば、蜂の巣状のハニカム構造のパイ生地などが作れるかもしれません。
食感はそのままに、強度アップ、といったメリットがある可能性もあります。

さらに細かくすれば、スポンジ構造のパイ生地などもできそうですね。
……いや、頭の中でシミュレーションしてみましたが、単なる荒いクッキーになりそうです。

それに、グルテンをうまく制御しながらノズルから出すのも、かなり難しそうですね……。

3Dポテトフライ・3Dパスタ

chatGPT Image

ペースト状で造形できる食材としては、マッシュポテトやパスタ生地が考えられるでしょうか。

ポテトフライは新しい形状のものが流行りやすいため、商用としてはもっとも向いていそうです。
パスタであれば、格子状のラザニア生地なども面白そうですね。ソースが絡みやすそうです。

さいごに

3Dフードプリンターは、新しい技術で、これからの可能性に満ちている──
そんなニュースや記事があまりにも多いと感じ、今回はあえて実際の問題点にフォーカスして書いてみました。

技術の発展によって解決できる課題もあるとは思いますが、肉のような食材は、細胞や筋繊維レベルの話になります。
それを再現しようとした場合、どれほど細かいノズルが必要になるのか、という疑問も残ります。
それなら培養肉の方が美味しくできそうですね。

実際、カニカマのように、食べても本物と区別がつきにくいレベルまで完成度を高めた代替食品もすでに存在します。
そう考えると、代替食品そのものについては、今後も十分に期待できる分野だと思います。

一方で、3Dフードプリンターは「未来の調理器具」というよりも、用途をかなり限定した技術だと感じました。
過度に夢を語るよりも、何ができて、何が難しいのかを冷静に見極めることが重要です。

参考記事:

「3Dプリントで作った霜降り肉」はうまいのか 大阪万博で“培養肉の未来”を見てきた EXPO 2025 大阪・関西万博 : ITmedia
3Dプリンタで“印刷した寿司”は美味しいのか? : PC Watch


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この記事を書いた人

関口アキラのアバター 関口アキラ 管理人

調理師、栄養士、フードスタイリスト、カメラマン。「食」にまつわる幅広い分野で活動中。飲食店の立ち上げやメニュー開発、料理撮影、メニューデザインなど多様な現場に携わる。
食の楽しさを伝えるメディア「趣食研究所」を運営し、記事の執筆・撮影・編集を一貫して手がける。科学的根拠に基づいた発信を大切にしています。
http://se-akira.com/

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