鉄分は日本人が不足しやすい栄養素の一つです。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、特に女性で推奨量(ほとんどの人が必要量を満たす量)を大きく下回っています。
| 年齢区分 | 性別 | 推奨量(mg/日) | 平均摂取量(mg/日) (2022年調査) |
|---|---|---|---|
| 20-29歳 | 男性 | 7.5 | 6.9 |
| 20-29歳 | 女性 | 10.5 | 5.9 |
そんな鉄分を効率よく摂取するテクニックを栄養士が解説します!
鉄は「吸収されにくい栄養素」
鉄は体に必須のミネラルですが、摂取量=吸収量ではありません。
特に植物性食品に多い鉄は、吸収率が低いことで知られています。
鉄は大きく2種類に分かれます。
- ヘム鉄
肉・魚に含まれる。吸収率が高い(約15〜25%) - 非ヘム鉄
野菜・豆・穀類に含まれる。吸収率が低い(約2〜5%)
日本人は非ヘム鉄からの摂取割合が高いため、吸収率を高める工夫が重要になります。
ビタミンCが鉄吸収を高める理由
ビタミンC(アスコルビン酸)は、非ヘム鉄の吸収を促進する代表的な栄養素です。
仕組みは2つ
- 非ヘム鉄を吸収されやすい形に還元する
- 非ヘム鉄(Fe³⁺) → 吸収されやすいFe²⁺へ変換
- 吸収阻害物質の影響を弱める
- フィチン酸・ポリフェノールなどによる阻害を軽減
このため、同じ鉄量でもビタミンCを一緒に摂るだけで吸収率が数倍に上がることが確認されています。
動物性の鉄分(ヘム鉄)はそもそも吸収されやすい
ビタミンCはヘム鉄の吸収に対してはほとんど影響を及ぼさないと言われています。
ヘム鉄は、鉄を含む「ヘム構造(ポルフィリン環)」として吸収されるため、非ヘム鉄のように腸内で溶解形態を変換したり、他の食事成分と反応したりしにくい構造的な特徴があるからです。

「さんまにすだちやカボスを絞ると鉄吸収が上がる」と紹介されることがありますが、
実際にはヘム鉄の吸収はビタミンCの影響をほとんど受けません。
こうした情報は、ヘム鉄と非ヘム鉄の違いが十分に整理されていないケースが多いようです。
酸っぱい=ビタミンCではない
「ビタミンCは酸っぱいもの」というイメージがあるかと思いますが、酸っぱさの正体はクエン酸で、ビタミンC自体はマイルドな酸味、または無味に近いそうです。
ただこう言ったイメージがあるのでビタミンCを含む商品には意図的に酸っぱい味にしていることが多いようです。
酸っぱくないからと言ってビタミンCが含まれていないわけではないので注意してください。
どのくらいで効果がある?

研究では、
- 食事に50mg程度のビタミンCを加えると
- 非ヘム鉄の吸収率が2〜3倍以上に増加
した例が多数報告されています。
※吸収率の増加幅は、食事内容(阻害因子の有無)や鉄の形態によって変動します。
Hallberg L, Brune M, Rossander L. Effect of ascorbic acid on iron absorption from different types of meals. Studies with ascorbic-acid-rich foods and synthetic ascorbic acid given in different amounts with different meals. Hum Nutr Appl Nutr. 1986 Apr;40(2):97-113. PMID: 3700141.
ビタミンC 50mgの目安となる食品量
果物類
- キウイフルーツ(緑):約1個(100g前後)
- いちご:約6〜7粒(100g)
- オレンジ:中1個(可食部 約150g)
- グレープフルーツ:約1/2個
- パイナップル:2切れ(約120g)
- マンゴー:約1/2個(100g)
- レモン:果汁約2個分(※皮なし)
- みかん:中2個
野菜類(生)
- 赤パプリカ:約1/2個(70〜80g)
- 黄パプリカ:約1/2個弱
- ブロッコリー:約1/2株(生 80g)
- キャベツ:約2枚(100g)
- ピーマン(緑):約3個(90g)
- ピーマン(赤):約1個(50g)
- 芽キャベツ:3〜4個
- カリフラワー:約120g
- 大根(根・生):約300g
- かぶ(葉付き・葉含む):中2個分
- 小松菜(生):約100g
- 春菊(生):約120g
- パセリ:約40g(※現実的にはトッピング用途)
野菜類(調理後の目安)
※加熱でビタミンCは減少するため、やや多めが目安
- ゆで小松菜:約120g
- ゆでブロッコリー:約100〜120g
- じゃがいも:中2個
- さつまいも(焼き・蒸し):中1本
飲み物・加工品
- 100%オレンジジュース:約200ml
- トマトジュース(無塩):約300ml
非ヘム鉄を多く含む食品一覧(鉄 mg / 100g)
豆類・大豆製品
- 乾燥ひよこ豆:6.2 mg
- 乾燥レンズ豆:7.5 mg
- 乾燥大豆:9.4 mg
- 納豆:3.3 mg
- 木綿豆腐:1.5 mg
- 厚揚げ:2.6 mg
- 高野豆腐(凍り豆腐・乾):6.8 mg
- おから(生):3.6 mg
野菜類
- 小松菜(生):2.8 mg
- ほうれん草(生):2.0 mg
- 春菊(生):3.7 mg
- チンゲン菜(生):1.0 mg
- モロヘイヤ(生):4.6 mg
- 枝豆(ゆで):2.5 mg
海藻類
- 乾燥ひじき(芽):6.2 mg
- 乾燥わかめ:6.6 mg
- 刻み昆布(乾):3.2 mg
穀類・種実類
- オートミール:3.9 mg
- 玄米:2.1 mg
- ごま(乾):9.6 mg
鉄鍋で調理するのもおすすめ
鉄鍋で調理することで鉄分が溶け出すことも知られています。詳しくはこちらの記事で。

逆に、吸収を妨げやすい組み合わせ
以下は鉄吸収を下げる可能性があります。
- 食事と同時の濃いお茶・コーヒー(ポリフェノール)
- フィチン酸が多い食品の単独大量摂取(玄米、大豆、インゲン豆、ピーナッツ、ごまなど)
- カルシウムの大量同時摂取(一部条件下)
完全に避ける必要はありませんが、
鉄補給を意識する食事のタイミングでは控えめにすると効果的です。
まとめ
- 鉄、特に非ヘム鉄は吸収率が低い
- ビタミンCは非ヘム鉄吸収を強力にサポートする
- 鉄鍋の使用も効果的
「鉄×ビタミンC」は、最も再現性が高い栄養テクニックの一つです。


