揚げ物や焼き料理で発生すると言われる「アクリルアミド」。
アクリルアミドには発がん性がある、と聞くと、「焼いたり揚げたりするのは危険なのでは?」と不安になりますよね。
結論からお伝えすると、アクリルアミドを恐れる必要はありません。
この記事では、
- なぜアクリルアミドができるのか
- 本当に発がん性は問題ないのか
- どの程度なら心配しなくてよいのか
を、栄養士の立場から科学的に整理して解説します。

加熱調理でアクリルアミドが発生するメカニズム

アクリルアミドは、加熱によって新たに生成される物質です。
ポイントとなるのは「メイラード反応」。料理を美味しくする「焦げ目」の反応のことです。
メイラード反応とは、
- アミノ酸(特にアスパラギン)
- 糖(還元糖)
が、120℃以上の高温で反応することで、焼き色や香ばしさを生み出す反応です。
この反応が起こる過程で、副産物としてアクリルアミドが生成されます。
ちなみに
- 茹でる
- 蒸す
といった水を使う調理では、ほとんど発生しません。
アクリルアミドの毒性|「発がん性あり」は本当?

アクリルアミドは、国際がん研究機関(IARC)により
グループ2A(おそらく発がん性がある)に分類されています。
International Agency for Research on Cancer (IARC) – Summaries & Evaluations
「…発がん性あるじゃん、じゃあもう揚げ物や炒め物食べれないや」
と思っているそこのあなた。
ここで重要なのは、この評価の根拠です。
- 主な証拠は動物実験
- しかも、かなりの高用量を投与した特殊な条件
- 人を対象とした疫学研究も行っている
その結果は、人でのアクリルアミド摂取とがん発症の間に一貫した強い関連は確認されていません。
つまり、
発がん性が「完全に否定されているわけではない」が、
日常的な摂取量で明確な健康被害が確認されているわけでもない
というのが、現在の科学的な立ち位置です。
…ちょっと言い回しが学者っぽいですかね。ちょっとくだけた感じで言うなら
という具合です。
アクリルアミドが多く含まれると言われている食品

アクリルアミドが多くなりやすいのは、炭水化物を多く含み、高温で調理される食品です。
代表的な例は以下の通りです。
- フライドポテト(平均値0.27mg/kg)
- ポテトチップス(平均値0.75mg/kg)
- 天ぷら(平均値0.02mg/kg)
- トースト(食パン:平均値0.01mg/kg)
- クッキー、ビスケット(平均値0.24mg/kg)
- 缶コーヒー(平均値0.009mg/kg)
- インスタントコーヒー(平均値0.55mg/kg)
「焦げた肉」が問題になるイメージを持たれがちですが、
実際にはじゃがいもや穀類などのデンプン食品の方がアクリルアミドは多く生成されます。
こう言った事実があるので「ポテトチップスは危険!発がん性のあるアクリルアミドが生成されている」
と言った閲覧数目当ての煽り記事がよく出回ってますね。残念なことです。
実際どのくらい摂ると危ない?|量で見るリスク
では、実際にどのくらい摂取すると問題になるのでしょうか。
各国の食品安全機関の評価では、
平均的な食生活を送っている人のアクリルアミド摂取量は、健康影響がはっきり出るレベルではないとされています。
これだけ食べると癌になる!具体的な量
とはいえ具体的に知りたいですよね。あくまで参考値として計算してみました。
IARCモノグラフ(Acrylamide, Vol.60 / Vol.101)で重視された代表的な動物実験では、
- 投与量:0.5〜3 mg/kg体重/日
- 投与期間:生涯(約2年間)
- 投与方法:飲料水に混ぜて連続投与
という条件が使われています。
単純に体重換算で人間に置き換えてみましょう。(体重60kgで計算)
すると、人が毎日30〜180mgのアクリルアミドを一生摂取すると癌になる
という想定になります。
ポテトチップス1袋(55g)に含まれるアクリルアミドの量は41.25 µgです(平均値)
ここから計算すると…

まあ不可能ですね。
これは単純な計算ですが、要は動物実験はこれほど高容量を与えた特殊な実験ということです。
一般的な食事からの摂取量(日本・欧州)
通常の食生活で摂ってしまうアクリルアミドの量も調査されています。
- 平均:0.3〜0.8 µg/kg体重/日
- 体重60kg → 18〜48 µg/日
※ µg(マイクログラム)= 1/1000 mg
単位が違うことからも分かりますね。もう一度お伝えしますが
各国の食品安全機関の評価では、
平均的な食生活を送っている人のアクリルアミド摂取量は、健康影響がはっきり出るレベルではないとされています。
コーヒーのアクリルアミドは気にすべき?

コーヒーにもアクリルアミドは含まれます。焙煎されますからね。
この点に関しても不安を煽る記事がかなり見受けられますので、私の見解を述べます。
- 缶コーヒー1本(190g)あたり:約1.7 µg
- インスタントコーヒー1杯(粉2g):約1.1 µg
ということは缶コーヒーを毎日17,600本〜105,900本飲み続けると大変危険です。癌になります。
と、いう冗談はさておき。
コーヒーのアクリルアミドについても同様に、過度な心配は不要です。
むしろ実際は
コーヒー摂取量が多い人ほど、総死亡率が低い傾向が報告されています。
アクリルアミドだけを切り取って怖がる必要はありません。
ただし、アクリルアミド自体はちゃんと危険

ここまで「食品中のアクリルアミドは過度に心配しなくてよい」と説明してきましたが、
アクリルアミドという物質そのものが安全という意味ではありません。
問題になるのは、主に工業用途で高濃度に曝露されるケースです。
アクリルアミドの製造・加工工場などでは、吸入や皮膚接触によって体内に取り込まれる可能性があり、実際に末梢神経障害(しびれ・筋力低下など)が報告されています。
このため国際がん研究機関(IARC)では、動物実験での発がん性を根拠に「おそらく発がん性あり(Group 2A)」と分類しています。
ただし、工場で問題になる曝露量はmg単位、食品からの摂取はµg単位であり、量も曝露経路もまったく異なります。
食品中の微量摂取と、工業的な高濃度曝露は同列には扱えません。
要するに、
というのが、科学的に妥当な整理です。
まとめ|アクリルアミドは「正しく怖がる」
アクリルアミドは、
- 加熱調理で確かに発生する
- 動物実験では発がん性が示されている
という事実がある一方で、
- 日常的な摂取量で明確な健康被害は確認されていない
- 普通の食生活で過度に気にする必要はない
というのが、現時点での科学的な結論です。
アクリルアミドに発がん性があるんだ!(事実)
↓
食品を加熱調理するとアクリルアミドが発生するんだ(事実)
↓
と言うことは加熱調理した食品には発がん性があるんだ(飛躍)
そんな煽り記事やYoutube動画が蔓延していたのでこの記事を書きました。
大切なのは、A=B、B=C、だからA=Cだ!と安直に考えないこと。
「焦げを食べたらガンになる」という単純な話ではありません。
科学的に正しく理解し、必要以上に食を怖がらないことが、健康的な食生活につながります。





