SNSやネットを見ていると、
「味の素=危険」「化学調味料は体に悪い」
といった言説を今でもよく目にします。
一方で、味の素の主成分であるグルタミン酸ナトリウムについては、実は世界中で安全性が確認されている成分でもあります。
「危険派」と「擁護派」で意見が真っ二つに割れがちですが、少なくとも科学的な評価においては、危険だと断定できる根拠はありません。
本記事は、「味の素は危険だ」と煽る内容ではありません。
むしろその逆で、安全性は認めたうえで、それでも私が使っていない理由を、料理人・栄養士の視点から整理していきます。
味の素(グルタミン酸ナトリウム)の安全性は本当に問題ないのか
味の素の主成分であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)は、
日本で食品添加物として認可されているうま味調味料であり、国際的にも安全性が認められています。

実際、グルタミン酸ナトリウムの安全性は
世界保健機関(WHO)や米国食品医薬品局(FDA)などによって科学的に評価・確認されています。
例えば国連の合同食品添加物専門家会議(JECFA)は「グルタミン酸ナトリウムはヒトの健康を害することはない」と結論づけており、FDAや欧州食品安全機関(EFSA)も同様の見解を示しています。
また、かつて話題になった
「中華料理症候群(MSGを摂ると頭痛やしびれが出る)」
についても、二重盲検試験などの研究では一貫した因果関係は確認されていません。
では、なぜ安全と分かっていながら「味の素はあまりオススメしない」と主張するのか。
以下では、その理由を料理の風味や味付けのバランス、そして健康面の観点から3つに分けて説明します。
それでも私が味の素を使わない理由
理由1: シンプルな旨味だけで、香りや雑味がない

味の素(グルタミン酸ナトリウム)は食品に強い「うま味」を与える調味料ですが、
旨味以外の風味要素を持ち合わせていません。
純粋なグルタミン酸ナトリウムそのものを舐めても美味しくは感じられず、
香りのある食材と組み合わせて初めて旨味が活きるという報告があります。
Functional neuroimaging of umami taste: what makes umami pleasant? l Edmund T Rolls
卵かけご飯+醤油+味の素、よりも
卵かけご飯+醤油+鰹節、の方が美味しそうに思えませんか?
旨みも大事ですが、「香り」や「雑味」も同じくらい大事なのです。
これが純粋なグルタミン酸ナトリウムには無いので、私が使わない理由です。
とはいえ、私もうま味調味料は毎日使ってはいます。
ですが、だしの素や中華だし、コンソメなどの風味が付与されているものばかりです。
鰹節・昆布などのエキスや肉・野菜のエキス、香辛料などが含まれており、複雑な香りやコクを伴った「旨味のある風味」が加わります。グルタミン酸ナトリウム単体で使用することはありません。
理由2: 料理がどれも同じ味に

「味の素」は手軽に料理を美味しくしてくれますが、
何にでも多用すると結局どの料理も旨みが強い似たような味になりがちです。
味の素は苦味や酸味、雑味をマイルドにしてくれますが、マイルドだけが美味しいわけではありません。
素材の個性を感じにくくなってしまいます。
美味しいと多用してどれも同じ味にしてしまうこの現象…
そうだ、マヨラーだ。何にでもマヨネーズをかけてしまい全部マヨネーズ風味にしてしまうマヨラーと同じ感覚を、味の素を多用する人にも感じていました。
素材本来の風味を尊重するには、過剰な旨味の“ドーピング”に頼らず必要最低限に留めることが大切です。塩や醤油など基本の調味料で素材の味を引き立て、どうしても味が物足りない部分を補う程度に旨味調味料を使うほうが、料理ごとの味わいの違いを楽しめます。
理由3: 塩ではないけれどナトリウムを含む(減塩の工夫も)

グルタミン酸ナトリウムは「塩(NaCl)そのものではない」とはいえ、ナトリウム成分を含んでいます。
つまり摂りすぎれば塩分相当の摂取過多につながる可能性があります。
特に、普段の料理で塩味をそのままにグルタミン酸ナトリウムだけ追加していけば、その分だけ余計にナトリウムを摂取してしまいます。
実際、グルタミン酸ナトリウム中のナトリウム含有率は約12%とされています(食塩中のナトリウムは約39%)ので、塩ほどではないにせよ無視はできません。血圧や健康を気にする方にとって、「グルタミン酸ナトリウム=塩ではないから安心」と思い込んで大量に使うのは望ましくないでしょう。

また、ラーメンスープに代表されるように、過剰な旨みは濃い塩分のスープでも思わず飲んでしまうほどの美味しさがあります。旨味と塩分の関係は切っても切れないものでしょう。
しかし視点を変えれば、グルタミン酸ナトリウムは上手に使えば塩分摂取の削減に役立つ可能性もあります。
例えばグルタミン酸ナトリウムを少量の塩と併用すれば、料理中の塩分を約40%カットしても美味しさを保てたという報告もあります。
要は、「塩の代わりにグルタミン酸ナトリウムを使う」ことで塩分を減らすテクニックが有効だということです。
ただしこの場合でも、塩の使いすぎ同様にグルタミン酸ナトリウムの入れすぎには注意し、あくまで風味の調整役として少量を賢く使うのがポイントです。
まとめ
グルタミン酸ナトリウム主体の「味の素」は、
危険な物質ではなく、安全性は国内外の専門機関により確認されています。
しかし、料理の仕上がりや食体験という面から見ると、
純粋な旨味だけに頼る調味は香りや深みを欠きがちで、使いすぎれば料理の味が画一的になるなどのデメリットもあります。
また塩分摂取の観点でも、グルタミン酸ナトリウム自体にナトリウムが含まれる以上は多用は禁物ですが、上手に活用すれば減塩にもつなげられます。
総合すると、「味の素」は決して“危険”ではないものの、
素材の持ち味を生かしたりバランスの良い味付けを心がけたりする上では、他の調味料や天然のだし素材のほうがオススメだと言えるでしょう。
とはいえ日々の家庭料理で、昆布や鰹節からとった出汁を活用するのは現実的ではありません。
必要に応じて顆粒だしなどを使用し、それでも旨みが足りない時は「味の素」を活用するのが、無理なく美味しい料理を作り続ける秘訣でしょう。




参考資料・出典
日本ファクトチェックセンターの解説記事factcheckcenter.jpfactcheckcenter.jp
EU食品情報機関(EUFIC)の記事eufic.org


