2025年に公表された「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で、食物繊維の推奨量が引き上げられました。食物繊維の重要性があらためて強調された形になりました。生活習慣病予防だけでなく、腸内環境、血糖コントロール、さらには高齢期の健康維持との関連が整理され、「意識して摂るべき栄養素」としての位置づけがより明確になっています。
同時期に、SNSを中心に広がっているのがFibremaxxing(ファイバーマキシング)という考え方です。
これは「食物繊維の摂取量を意図的に増やす」食習慣を指す言葉で、TikTokやInstagramを中心に急速に広まりました。
では、この流れは本当に健康的なのでしょうか。
栄養士の立場から、冷静に整理していきます。
Fibremaxxing(ファイバーマキシング)とは何か

Fibremaxxing=食物繊維の摂取を最大化しようとする食習慣です。
特別な栄養学用語ではなく、SNS発のトレンドワードですが、内容自体は非常にシンプルです。
- 野菜・豆類・全粒穀物を積極的に選ぶ
- 食事や間食を「繊維量基準」で考える
- 1日の摂取量が推奨量を超えることも厭わない
という姿勢が特徴です。

食物繊維の役割と推奨量

食物繊維の主な働き
食物繊維は「消化されない成分」と説明されることが多いですが、体内では多くの重要な役割を果たします。
- 腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整える
- 血糖値の急上昇を抑える
- コレステロール排泄を促進する
- 満腹感を高め、食べ過ぎを防ぐ
食物繊維は、タンパク質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素に次ぐ、第6の栄養素と呼ばれています。
これらは疫学研究・介入研究の双方で一貫して支持されています。
推奨量の目安
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、成人の目標量として概ね20〜25g/日以上が示されています(性別・年齢で差あり)。
一方、国民健康・栄養調査を見ると、多くの日本人は14〜18g程度にとどまっているのが現状です。
つまり、Fibremaxxing以前に「そもそも不足している人が非常に多い」という前提があります。
食物繊維を積極的に摂ること自体は「とても良い」
ここははっきり言えます。
食物繊維を意識的に増やそうとする姿勢自体は、非常に健全です。
- 精製食品中心の食事からの脱却
- 野菜・豆・穀類への関心の高まり
- 腸内環境への意識
これらは、現代の栄養課題に対する正しい方向性です。
ただし「大量摂取」には注意が必要
Fibremaxxingで問題になりやすいのは、短期間での急激な増加です。
起こりやすいトラブル
- 腹部膨満感
- ガスの増加
- 下痢・便秘
- 胃腸の不快感
特に、これまで繊維摂取が少なかった人が、いきなり30〜40g以上を目指すと不調が出やすくなります。
どこまでならOKか
明確な「上限量」は設定されていませんが、
25〜30g/日程度を安定して摂れる状態が、現実的かつ安全なラインと考えられます。
ポイントは、
- 徐々に増やす
- 水分をしっかり摂る
- 食品由来を基本にする
この3点です。
Fibremaxxingにおすすめの食品
野菜類
ごぼう
- 量:50g(きんぴら小鉢1皿)
- 食物繊維:約 2.8〜3.0g
ブロッコリー
- 量:80g(小房4〜5個)
- 食物繊維:約 3.6g
葉物野菜(小松菜・ほうれん草など)
- 量:100g(おひたし1皿)
- 食物繊維:約 2.5〜3.0g
👉 野菜は「1皿=2〜4g」と覚えると計算しやすい。
豆類
大豆(水煮)
- 量:100g(小鉢1杯)
- 食物繊維:約 6.5g
ひよこ豆(ゆで)
- 量:100g(サラダ1杯)
- 食物繊維:約 7.5g
レンズ豆(ゆで)
- 量:100g
- 食物繊維:約 7.0〜8.0g
👉 豆類は少量で一気に稼げる主力食材。
全粒穀物
オートミール(乾)
- 量:30g(1食分)
- 食物繊維:約 2.8〜3.0g
玄米(炊飯後)
- 量:150g(茶碗1杯)
- 食物繊維:約 2.1g
全粒パン
- 量:1枚(40〜50g)
- 食物繊維:約 3.0g前後
👉 主食を「白 → 全粒」に変えるだけで**+2〜3g**。
海藻類
わかめ(戻し)
- 量:50g(味噌汁1杯分)
- 食物繊維:約 1.5g
ひじき(煮物)
- 量:30g(小鉢1皿)
- 食物繊維:約 4.0g
👉 海藻は少量で効率が良いが、毎日少しずつが基本。
きのこ類
しめじ・えのき・舞茸など
- 量:100g(1パック弱)
- 食物繊維:約 3.0〜4.0g
👉 低カロリーでFibremaxxing向き。
現実的な1日の組み合わせ例
- 朝:
オートミール30g(3g)+果物 - 昼:
玄米150g(2g)+ブロッコリー80g(3.6g) - 夜:
レンズ豆100g(7.5g)+葉物野菜100g(2.5g) - 副菜:
ひじき煮30g(4g)
👉 合計:約22〜25g
→ 日本人の目標量に無理なく到達。
「一品で大量に」ではなく、食事全体で分散させるのがコツです。
食物繊維そのものな食品「寒天」
食物繊維の象徴的存在が寒天です。
例えば、粉寒天 10gに含まれる食物繊維総量は約8.1 gになります。
- 主成分は水溶性・不溶性食物繊維
- エネルギーはほぼゼロ
- ミネラル吸収への影響も比較的少ない
和菓子文化の中で自然に使われてきた点も、日本人の食生活と相性が良い食品です。
ただし、寒天だけに偏るのではなく、多様な食品の一部として使うのが理想です。
まとめ:Fibremaxxingは「方向性は正しい、やり方が大事」
Fibremaxxingは流行語ではありますが、
「食物繊維不足を自覚し、意識的に補おうとする流れ」自体は、栄養学的に見ても歓迎すべきものです。
重要なのは、
- 不足を埋めるための手段として使う
- 過剰や極端さに走らない
- 自分の消化耐性に合わせる
このバランスです。
流行に乗るのではなく、科学的に正しい形で取り入れる。
それが、栄養士としておすすめしたいFibremaxxingの付き合い方です。
参考資料・根拠
Fibremaxxing Has Gone Wildly Viral – and For Once, Nutritionists Can’t Rave Enough About a TikTok Nutrition Trend
国民健康・栄養調査(最新年)
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
食物繊維摂取量と生活習慣病の関連

