揚げ物をしたあとに残る揚げ油。
「使い回すと体に悪いのでは?」
「古い油は危険なのでは?」
と不安になる人は多いと思います。
結論からお伝えすると、
劣化した揚げ油は確かに身体に良いものではありません。
ただし、状態を見極めれば、揚げ油は複数回使えます。
この記事では、揚げ油の健康面について、
誤解されがちなポイントを整理して解説します。
劣化した揚げ油のどこが「体に悪い」のか

揚げ油で実際に起きている変化
揚げ油を使い回すことで起きる変化は、主に以下の3つです。
① 酸化
油脂が傷む原因の一つが酸化です。
油に含まれる不飽和脂肪酸は、分子構造に「空き」があり、そこに酸素が入り込むことで酸化が起こります。
特に、油が空気に長時間さらされると酸化は進みやすくなります。
酸化した油は、異臭が出て風味が悪くなり、品質が大きく低下します。
これが進むと、体調不良の原因になることもあります。
② 重合
加熱を繰り返すと、油を構成する分子同士が結合し、より大きな分子へと変化していきます。
短時間では目立ちませんが、長時間の加熱や使い回しによって、この重合と呼ばれる変化が進みます。
重合した油は粘度が増し、どろっとした「重たい油」になります。
こうした油は消化が悪く、胸焼けや胃もたれの原因になることがあります。
何度も使った天ぷら油で起こる不快感の一因が、まさにこの変化です。
③ 分解
油脂が傷むもう一つの原因が分解です。油の主成分であるトリグリセリドは、熱や水分の影響で分解され、脂肪酸とグリセリンに分かれることがあります。
分解によって生じた遊離脂肪酸は、酸味や刺激のある味を生み、油の風味を大きく損ないます。油をなめたときにピリッとした刺激を感じる場合、遊離脂肪酸が増えているサインと考えられます。
遊離脂肪酸自体の健康影響は大きくありませんが、油の品質低下を示す重要な目安になります。
ちょっと注目;食用油の傷み アクティビティノート第284号(2020年10月):一般社団法人日本化学工業協会
簡単に言うと
揚げ油を使っていくと上記の反応により
- 嫌な臭いが出てくる
- 油の色が黒くなってくる
- 油がドロドロになってくる
と言う状態になってきます。料理をする人は実感としてわかってもらえると思います。
重要なのは、
これらは「即健康被害」ではないという点です。
多少取る程度でしたら胸焼け程度で終わりです。
死に至る、癌になる、重症化するといった心配はまずありません。
劣化した揚げ油に発がん性はあるの?
たまに揚げ油と「発がん性」の関係についての記事が見受けられます。
揚げ油と直接関係はないですが、じゃがいもなど炭水化物の揚げ物で「アクリルアミド」という物質が発生します。
そしてこの「アクリルアミド」は国際がん研究機関(IARC)から「おそらく発がん性がある」と言われています。
しかしご安心を。
アクリルアミドの量が比較的多いポテトチップスを毎日1000袋、数年間食べ続けたら癌になるかもしれない、という程度の危険性です。
この点については、別記事で詳しく解説しています。
よくある発がん性云々の記事は0.0001%くらいのものを99%癌になる!と喚き散らして閲覧数稼ごうとしているだけです。

古い油を摂取することで起きる健康被害一覧

劣化した揚げ油を摂取すると、すぐに重篤な健康被害が起きるわけではありません。
しかし、体にとって「好ましくない影響」が起こることは確かです。
代表的なものを整理すると、以下のような影響が考えられます。
胃もたれ・胸焼け・消化不良
加熱と酸化を繰り返した油は分子が大きくなり、消化されにくくなります。
その結果、胃に負担がかかり、胸焼けや胃もたれを感じやすくなります。
下痢・腹部不快感
酸化・分解が進んだ油は腸への刺激となり、体質によっては下痢や腹痛を引き起こすことがあります。
「揚げ物を食べたあとにお腹の調子が悪くなる」ケースの一因です。
風味の低下による食事満足度の低下
健康被害とは少し異なりますが、古い油は明らかに味や香りが悪くなります。
以前、とあるインド料理屋さんであきらかに酸化しまくったオイルのドレッシングが出てきて気持ち悪くなった思い出があります…
酸化脂質の摂取による身体への負担
酸化した油には、体内で処理にエネルギーを要する成分が増えます。
これは「毒」ではありませんが、身体にとって余計な仕事が増える状態です。
重要なのは、
これらはいずれも少量・一時的な摂取で深刻な健康被害につながるものではないという点です。
「すぐに病気になるわけではないが、積極的に摂る理由もない」
それが、栄養士としての現実的な評価です。
まとめ
古い揚げ油について大切なのは、「過剰に怖がらないこと」と「軽視しないこと」の両立です。
劣化した油は、胃もたれや消化不良、風味の低下など、身体や食事の質にとってマイナスになる影響を持ちます。
命に関わるような危険性や、ただちに病気になるようなものではありませんが、身体にとって好ましい状態ではないことは確かです。
一方で、「揚げ油を使い回す=即危険」というわけでもありません。
問題なのは回数ではなく、油が劣化しているかどうかです。
嫌なにおい、色の濃さ、粘度の変化などは、油が傷んでいるサイン。
そうした状態の油を使い続けることに、積極的なメリットはありません。
つまり、
古い油は「恐れる対象」ではなく、
状態を見て、必要ならきちんと手放すべきもの。
それが、栄養士としての現実的な結論です。


