「精製塩は買ってはいけない」
「天然塩ならいくら摂っても大丈夫」
塩について調べていると、こんな極端な意見を目にすることがあります。
精製塩は体に悪く、天然塩は健康的。
いつの間にか、そんなイメージが定着してしまった印象です。
では実際のところ、
精製塩と天然塩で、健康への影響に大きな違いはあるのでしょうか。
栄養学の視点から、数字をもとに整理していきます。
精製塩はなぜ悪者にされがちなのか

精製塩についてよく言われる主張は、だいたい次の3つです。
- 精製塩はミネラルがほとんど含まれていない
- ミネラルバランスが崩れた不自然な塩である
- 天然塩なら体にやさしく、摂りすぎても問題ない
「天然塩は体に良いからどれだけ摂っても大丈夫」といった
かなり過激な派閥も見受けられました。
精製塩はミネラル分が全く含まれていないので身体に毒、とまで言われています。
本当に、天然塩にはそれほどのミネラルが含まれているのでしょうか。
精製塩と天然塩の成分比較

まずは、代表的な塩の成分を100gあたりで比較してみます。
精製塩
食塩相当量99.5g
マグネシウム85mg
カルシウム0.77mg
カリウム 測定下限未満
某国産平釜天日塩
食塩相当量86.36g
マグネシウム700mg
カルシウム400mg
カリウム240mg
ヒマラヤ岩塩(ピンクソルト)
食塩相当量 96.4g
マグネシウム 249.969mg
カルシウム 311.117mg
カリウム 351.559mg
比較してみると、国産の天日塩がミネラル分が豊富で食塩相当量がだいぶ低いですね。
岩塩はミネラル分豊富で食塩相当量は精製塩並みに高いです。
「食塩相当量が低い=ミネラルが多い」ではない
食塩相当量が低いということはどういうことでしょうか。
国産の天日塩は、100gあたりの食塩相当量が86.36gです。
ぱっと見ると、「塩分が少ない!残りの約14gはミネラルなのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、マグネシウム・カルシウム・カリウム・他をすべて足しても、100gには到底届きません。
では、残りは何か。
答えは 水分 です。水が含まれている分、食塩相当量が低く見えただけです。
いわゆる「しっとりした塩」ですね。
「食塩相当量が低い=減塩」でもない
また、食塩相当量が少ないと言うことはそれだけ塩分少なくて良いんだ
という言説もちらほら見受けられました。
単純に、食塩相当量が少ないということは基本的にそれだけしょっぱくないだけなので
同じ塩分濃度にしようと思ったら精製塩で10gで済むところを国産の天日塩なら12g入れないといけないだけです。
減塩目的なら塩化カリウムが含まれた商品が出回っているので、そちらをお使いください。
1日どれくらい塩を摂るのか
次に、1日の塩分摂取量を見てみます。
- 成人男性:7.5g未満
- 成人女性:6.5g未満
が目標量とされていますが、
実際の日本人の平均摂取量は 約10g と言われています。
ただし、この塩分をすべて「塩そのもの」から摂っているわけではありません。
醤油、味噌、加工食品、惣菜など、
日常の食事には多くの塩分源があります。
実際に、
料理や食卓で使う「塩」から摂っている量は、1日あたり約1g程度
とされています。
(塩事業センター「塩百科」)
その1gで、ミネラルはどれくらい摂れるのか

では、食塩相当量が1gになるよう計算して、
天然塩のミネラル量を見てみましょう。
某国産平釜天日塩(1g相当)
- マグネシウム:約8.11mg
(1日必要量の約2.3~2.9%) - カルシウム:約4.63mg
(1日必要量の約0.6~0.7%) - カリウム:約2.78mg
(1日必要量の約0.1~0.14%)
ヒマラヤ岩塩(1g相当)
- マグネシウム:約2.59mg
(1日必要量の約0.7~0.9%) - カルシウム:約3.23mg
(1日必要量の約0.4~0.5%) - カリウム:約3.65mg
(1日必要量の約0.15~0.18%)
比較的ミネラルが多いとされる国産の天日塩でも、
マグネシウムが1日の必要量に対して 2〜3%程度 です。
ちなみに、
アーモンドなら2〜3粒で同程度のマグネシウム
牛乳なら5mlで同程度のカルシウム
じゃがいもなら0.5gで同程度のカリウムが
摂れます。
ミネラル摂取目的での天然塩は、ほぼ意味がない
ここまでの数字を見ると、
塩をミネラル補給の手段として考えるのは、かなり効率が悪いことが分かります。
- 精製塩はミネラルが少ない
- 天然塩はミネラルが多い
これは事実ですが、
摂取量を考えると、健康への影響はほとんどありません。
塩の種類よりも、
どれだけ塩分を摂っているか のほうが、
健康への影響としては圧倒的に重要です。
結論:塩の種類より「量」を気にする
まとめると、
- 精製塩が特別に体に悪いわけではない
- 天然塩だからといって、摂りすぎて良いわけでもない
- ミネラル補給目的で塩を選ぶ意味はほとんどない
というのが、栄養学的に見た現実です。
普段使いの塩は、精製塩で十分。
料理の仕上げや嗜好として、好みの塩を楽しむのは問題ありません。
ただし、健康を考えるなら、
塩の種類よりも、まずは減塩を意識すること。
これが、塩と健康を考えるうえでの一番大切なポイントです。
参考資料
- 公益財団法人 塩事業センター
- An Analysis of the Mineral Composition of Pink Salt Available in Australia
- 塩百科(塩事業センター)

