焼き魚に、おにぎりに、ホイル焼き。
食卓でおなじみの鮭ですが、栄養については「たんぱく質がとれる魚」くらいのイメージかもしれません。
実は鮭には、たんぱく質だけでなく、ビタミンDやビタミンB群、DHA・EPAなど、注目したい成分がいろいろあります。ただし、鮭の種類によって、カロリーや脂質の量にはかなり差があります。
そもそも鮭に種類あるの?という人から詳しく知りたい方まで、この記事では栄養士の視点から、ほかの魚と比べた鮭の強み、栄養を無駄にしにくい調理法、相性のよい食材を解説します。
鮭のたんぱく質・カロリーはどれくらい?

同じ「鮭」でも、種類によって栄養は違う
スーパーに並ぶ白鮭、銀鮭、アトランティックサーモン。どれも鮭の仲間ですが、栄養成分は同じではありません。
まずは、調理前の可食部100gあたりで比べてみましょう。
| 種類 | カロリー | たんぱく質 | 脂質 | ビタミンD |
|---|---|---|---|---|
| 白鮭(秋鮭) | 124kcal | 22.3g | 4.1g | 32.0μg |
| 銀鮭〈養殖〉 | 188kcal | 19.6g | 12.8g | 15.0μg |
| 紅鮭 | 127kcal | 22.5g | 4.5g | 33.0μg |
| アトランティックサーモン〈養殖・皮つき〉 | 218kcal | 20.1g | 16.5g | 8.3μg |
※いずれも「生」の成分値。塩鮭や調理済みの製品とは異なります。数値は代表値で、季節や部位などによっても変動します。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。
たんぱく質は、どれも100gあたり約20g。一方、脂質は白鮭とアトランティックサーモンで約4倍の差があります。
つまり、「鮭は高たんぱく」とはいえますが、「鮭はどれも低カロリー」とは言い切れません。
カロリーを抑えながらたんぱく質をとりたいなら白鮭や紅鮭、脂のうま味やしっとりした食感を楽しみたいなら銀鮭やアトランティックサーモン、といった選び方ができます。
鮭1切れのたんぱく質・カロリーの目安
切り身の大きさは商品によって違いますが、ここでは調理前の食べられる部分が80gの場合で計算します。
| 種類 | カロリー | たんぱく質 |
|---|---|---|
| 白鮭 | 約99kcal | 約17.8g |
| 銀鮭〈養殖〉 | 約150kcal | 約15.7g |
| 紅鮭 | 約102kcal | 約18.0g |
| アトランティックサーモン〈養殖・皮つき〉 | 約174kcal | 約16.1g |
※上の成分値に0.8を掛けた計算値。調理油や調味料は含みません。
カロリーを調べるときは、「鮭1切れ」という単位だけでなく、種類・重さ・調理法を確認すると、実際に食べる量に近づけられます。
ほかの魚と比べてわかる、鮭の栄養の強み
たんぱく質に加えて、ビタミンDをとりやすい
鮭の特徴を考えるうえで、ぜひ注目したいのがビタミンDです。
食品の中でもビタミンDをトップクラスに摂取しやすいんです。
白鮭と、身近なサバ・タラを比べてみましょう。
| 魚の種類〈生〉 | カロリー | たんぱく質 | ビタミンD |
|---|---|---|---|
| 白鮭 | 124kcal | 22.3g | 32.0μg |
| マサバ | 211kcal | 20.6g | 5.1μg |
| マダラ | 72kcal | 17.6g | 1.0μg |
※可食部100gあたり。出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。
この比較では、白鮭はたんぱく質をしっかり含みながら、ビタミンDの多さが目立ちます。
ビタミンDは、腸でのカルシウム吸収を助け、骨の健康を支える栄養素です。「骨のためにカルシウムをとろう」と考えるとき、一緒に意識したい成分でもあります。
ただし、鮭がすべての面で優れているわけではありません。カロリーの低さではタラに強みがあり、サバにもビタミンB12などを多く含む特徴があります。
鮭のよさは、たんぱく質とビタミンDを一緒にとれること。 魚全体に順位をつけるより、何を補いたいかで選ぶほうが、毎日の献立に役立ちます。
青魚だけじゃない。鮭にもDHA・EPAが含まれる
DHAやEPAと聞くと、サバやイワシを思い浮かべるかもしれません。鮭も、これらの脂肪酸を含む魚です。
例えば白鮭の生100gには、DHAが460mg、EPAが240mg含まれています。
DHA・EPAは、n-3系脂肪酸、いわゆるオメガ3に分類されます。体内では細胞膜の構成などに関わり、魚を食べることで直接とることができます。
カロリーが気になると脂を減らすことばかり考えがちですが、脂質には量だけでなく、どんな脂肪酸を含むかという違いもあります。
もちろん、体に必要な脂質でもエネルギーはあります。「魚の脂だからいくら食べてもよい」という意味ではなく、量と中身の両方を見ることが大切です。
ビタミンB群も、見逃せない栄養素
鮭には、ビタミンB6やビタミンB12も含まれています。
| 食品〈すべて生〉 | ビタミンB6(mg) | ビタミンB12(μg) |
|---|---|---|
| 白鮭 | 0.64 | 5.9 |
| サバ〈マサバ〉 | 0.59 | 13.0 |
| 鶏むね肉〈若どり・皮なし〉 | 0.64 | 0.2 |
| 卵〈鶏卵・全卵〉 | 0.09 | 1.1 |
※可食部100gあたり。卵は殻を除いた重量です。鮭の値は種類によって異なります。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。
白鮭のビタミンB6は、同じ重さの鶏むね肉と同程度。一方、ビタミンB12は、鶏むね肉や卵より多く含まれています。
サバは白鮭よりビタミンB12が多いため、鮭がすべての成分で優れているわけではありません。それでも、たんぱく質と一緒に、ビタミンB6・B12を補えるのは鮭のよいところです。
ビタミンB6は、たんぱく質を構成するアミノ酸の代謝などに関わる栄養素。ビタミンB12は、正常な赤血球の形成や神経の働きを支えます。
たんぱく質の量だけを見ると、こうした成分は見落としがちです。鮭を主菜にすると、体の材料になるたんぱく質と、その体の働きを支えるビタミンを一緒にとれます。
ただし、これらは鮭だけの特別な栄養ではありません。「食べれば疲れがとれる」といった即効性を期待するより、日々の食事で必要な栄養を補う食品として取り入れましょう。
鮭の赤い色は「アスタキサンチン」
鮭らしい赤やオレンジ色のもとになるのが、アスタキサンチンです。カロテノイドという色素の仲間で、鮭は身が赤く見えても、魚の分類上は白身魚にあたります。
アスタキサンチンは抗酸化作用をもつ成分として知られています。ただし、成分に抗酸化作用があることと、鮭を食べた人に特定の美容・健康効果が現れることは、分けて考える必要があります。
「鮭を食べれば若返る」「脂肪が燃える」とまで広げず、鮭に含まれる特徴的な成分の一つとして押さえておくとよいでしょう。
鮭の栄養素を逃さない調理法は?
せっかく食べるなら、栄養を残さず摂りたいですよね。
ただ、調理中の栄養の変化は、加熱時間や温度、流れ出る水分・脂の量によって変わります。すべての栄養素を完全に保つ調理法はありません。
家庭では、流れ出た汁や脂を料理に活かせるか、必要以上に加熱していないかを意識するとよいでしょう。
蒸し料理・ホイル焼きは、DHA・EPAを残しやすい選択肢

鮭の脂を活かしたいときに向いているのが、蒸し料理やホイル焼きです。
サーモンなどを用いた研究では、蒸す方法とホイルに包んで焼く方法は、揚げる方法やグリル調理に比べて、DHA・EPAの保持率が高い結果でした。ただし、これは研究で設定された条件での比較であり、家庭のあらゆる調理で同じ差が出るわけではありません。
家庭で応用するなら、鮭と野菜を一緒に包み、出てきた汁も野菜に絡めて食べる方法が取り入れやすいでしょう。
ホイルに包めば栄養がすべて閉じ込められるわけではありませんが、出てきた汁や脂を捨てずに食べやすいという利点があります。
汁物は、水に溶け出した栄養も食べやすい

ビタミンB群などの水溶性ビタミンは、調理中に煮汁へ移ることがあります。ゆで汁を捨てると、その分も失われますが、汁ごと食べる料理なら、溶け出した一部をとることができます。
鮭なら、具だくさんのスープやみそ汁、豆乳煮などが使いやすい組み合わせです。
ただし、栄養のために塩分の多い汁まで無理に飲み干す必要はありません。薄味・具だくさん・汁は適量にすると、日々の食事にも取り入れやすくなります。
カロリーを抑えたいなら、追加する油にも注目
鮭そのもののカロリーだけでなく、調理で足す油やバター、マヨネーズによっても、一皿のエネルギーは変わります。
カロリーを抑えたい場合は、蒸し料理や汁物など、油をあまり加えなくてもおいしく食べられる調理法が便利です。
脂の多い銀鮭やアトランティックサーモンなら、その脂を活かすつもりで、追加する油を控えめにする方法もあります。
「栄養を残すこと」と「カロリーを減らすこと」は、必ずしも同じではありません。魚の脂を料理に残せば、その脂のエネルギーも食べることになります。目的に合わせて調整しましょう。
「加熱すると100gあたりの栄養が増える」のはなぜ?
食品成分表を見ると、生よりも焼いた魚のほうが、100gあたりのたんぱく質が多くなっていることがあります。
これは、焼くことでたんぱく質が新しく生まれたという意味ではありません。調理で水分などが減り、重さが変わるためです。文部科学省も、調理に伴う成分の流出・変化と、食品の重量変化を説明しています。
生100gと焼いた後の100gは、もとの魚の量が同じとは限らない。 栄養の残り方を比べるときに、覚えておきたいポイントです。
鮭と相性のよい食材は?足りない栄養を補う組み合わせ
鮭は栄養豊かな魚ですが、それだけで食事が整うわけではありません。
組み合わせる食材は、特別な「相乗効果」を狙うより、鮭だけではとりにくい栄養を補うと考えると選びやすくなります。
小松菜:カルシウムとビタミンCを補う

鮭に合わせる野菜として、栄養面で使いやすいのが小松菜です。小松菜にはカルシウムやビタミンCが含まれています。
鮭の切り身は、ビタミンDの供給源にはなりますが、骨を食べる小魚のようなカルシウム源ではありません。そこで、小松菜などを組み合わせると、カルシウムも補えます。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けますが、「同じ皿で食べると吸収率が何倍になる」という意味ではありません。食事全体で両方を確保する組み合わせ、と考えましょう。
例えば、鮭と小松菜の蒸し煮や、焼き鮭に小松菜の副菜を添える献立がおすすめです。
牛乳・ヨーグルト:カルシウムを足したいときに
乳製品も、カルシウムを補う選択肢です。鮭を牛乳入りのスープにしたり、焼いた鮭に無糖ヨーグルトを使ったソースを添えたりすると、料理としても合わせやすくなります。乳製品は代表的なカルシウム源です。
クリームやバターをたっぷり使わなくても、牛乳でコクを足す、ヨーグルトで酸味を添えるなど、仕上げ方には幅があります。
カロリーが気になる場合は、鮭の種類と乳製品の量を合わせて調整するとよいでしょう。
野菜・きのこ:食物繊維を補い、主菜のボリュームを出す
鮭には食物繊維がほぼ含まれないため、野菜やきのこを添える意味があります。
ホイル焼きならキャベツやきのこ、スープならにんじんや葉物野菜など、鮭と一緒に食べられる具材を増やしてみましょう。
ここでの狙いは、何か一つの食材で鮭の栄養効果を劇的に高めることではありません。主菜に不足する食品群を足し、一食として整えることです。
栄養士として献立を考えるなら、鮭の種類を細かく選ぶことと同じくらい、「鮭だけで済ませないこと」も大切だと考えます。
まとめ|鮭は、種類と食べ方で栄養を活かせる魚
鮭は、たんぱく質に加えて、ビタミンDやビタミンB群、DHA・EPAなどをとれる魚です。
毎日の食事では、次のポイントを押さえておくと選びやすくなります。
- たんぱく質は100gあたり約20g。カロリーや脂質は種類によって大きく違う
- 白鮭は、脂質を抑えながらたんぱく質とビタミンDをとりたいときに使いやすい
- 蒸し料理・ホイル焼き・汁物は、流れ出た汁や脂を活かしやすい
- 小松菜や乳製品、野菜・きのこを合わせると、鮭だけでは不足する栄養を補いやすい
カロリーを控えたい日もあれば、脂ののった鮭を楽しみたい日もあるはず。栄養の特徴を知ったうえで、その日の献立や食べたい料理に合わせて選んでみてください。


