最近、「砂糖税」が、世界のさまざまな国で導入されてきています。
「甘いものを楽しむのにも、追加の税金がかかるの?」
「値上げするだけで、健康になるの?」
この記事では、砂糖税の歴史、メリットとデメリット、日本の状況などを解説していきます。
砂糖税の最近の動向

2026年10月更新
- 🇩🇪 ドイツ|2026年、導入に向けた議論が具体化
2026年春の専門委員会の提言などを受け、制度設計が進んでいます。9月に報道された草案では、無糖のゼロ飲料などを除外し、糖分量に応じて3段階で課税する案が示されました。ただし、政府内の調整が続いており、制度の詳細や施行時期は確定していません。 - 🇰🇷 韓国|2021年にも法案が提出され、2026年に議論が再燃
加糖飲料への負担金は2021年にも法案が提出されましたが、成立には至りませんでした。2026年1月に大統領が導入の議論を呼びかけ、再び注目されています。一部の議員案は代替甘味料入りのゼロ飲料も対象としており、家計への負担や実効性が論点になっています。 - 🇦🇪 UAE|2017年に炭酸飲料などへの課税を開始、2026年に方式を変更
2017年に炭酸飲料などへの物品税を導入し、2019年には甘味飲料へ対象を広げました。2026年1月からは、甘味飲料への一律50%課税を、糖分量に応じた1L当たりの課税へ変更。低糖飲料や人工甘味料のみの飲料は税額がゼロとなっています。 - 🇬🇧 英国|2018年に導入、2028年に対象拡大へ
2016年に制度を発表し、2018年4月から清涼飲料産業税を施行しました。2028年1月には、課税の下限を100mL当たり糖分5gから4.5gへ引き下げ、加糖の包装済み乳飲料などにも対象を広げる予定です。 - 🌍 WHO|2016年に課税を強く推奨、2025年から新たな取り組み
2016年に加糖飲料への課税を強く推奨しました。2025年には「3 by 35」を開始し、2035年までに、たばこ・酒・加糖飲料の実質価格を課税によって少なくとも50%引き上げるよう各国に呼びかけています。
砂糖税とは?
「砂糖税」は、世界共通の正式な税の名前ではありません。
現在、健康対策として話題になる砂糖税の中心は、砂糖などを加えた飲料に課税する「加糖飲料税」です。
英語では、Sugar-Sweetened Beverage Tax、略してSSB税と呼ばれます。

対象になり得るのは、砂糖入りの炭酸飲料やスポーツドリンクなど。
国によっては、甘い乳飲料や菓子なども対象になります。
つまり、「砂糖税がある国では、砂糖を使った料理やお菓子にすべて同じ税金がかかる」というわけではありません。
対象や税率は、それぞれの制度によって違います。
砂糖税の目的は?
主な狙いは、次の3つです。

- 価格を上げることで、加糖飲料の購入・摂取を減らす。
- メーカーに、商品の糖分を減らすよう促す。
- 健康対策などに使える財源を確保する。
税金というと、「政府がお金足りないから甘いものからもふんだくってるのか!」と思いそうですが、健康対策を目的とする税金でもあるんですね。消費者の選び方と、メーカーの商品づくりの両方に働きかける政策と考えると、わかりやすいでしょう。
実は日本にも「砂糖税」があった
日本は関係ないや、と思いきやすでに日本では「砂糖税」を導入した過去がありました。
1901年(明治34年)から1989年(平成元年)まで、砂糖や糖蜜に「砂糖消費税」が課されていました。
始まった背景には、日清戦争後の財源確保があります。
現在の加糖飲料税のように、肥満や糖尿病への対策として始まった制度ではありません。
面白いのは、当初の課税方法です。
黒い砂糖よりも、白く精製された砂糖のほうが高い税率になっていました。

これは「白砂糖のほうが健康に悪い」という判断ではなく、白い砂糖を贅沢品と見る考えや、小規模な製糖業者を保護する目的によるものです。
砂糖消費税は、その後、1989年の消費税導入に伴って廃止されました。
「日本にも砂糖税があった」という話は本当ですが、現代の健康政策としての砂糖税とは違うものでしたね。
参考:税の歴史クイズ 砂糖への課税方法(答え)- 国税庁
現在の砂糖税について
砂糖や甘い食品への課税自体には長い歴史があります。
が、この記事では、現在の健康対策としての砂糖税に絞って説明したいと思います。
2010年代に、健康対策としての「砂糖税」が各国で広がりました。
| 年 | 主な動き |
|---|---|
| 2011年 | ハンガリーが、糖分・塩分などの多い一定の食品や飲料を対象とする公衆衛生製品税を導入 |
| 2012年 | フランスが加糖飲料などへの課税を開始 |
| 2014年 | メキシコが全国的な加糖飲料税を導入 |
| 2016年 | WHOが加糖飲料への課税を強く推奨 |
| 2018年 | 英国が、糖分濃度に応じて課税する清涼飲料産業税を施行 |
WHOが2026年1月に公表した報告によると、少なくとも116か国が、何らかの加糖飲料に国レベルの物品税を課しています。ただし、これは2024年7月時点の集計であり、すべての国が同じ仕組みの「健康目的の砂糖税」を採用しているわけではありません。
UNICEF:Implementing Taxes on Sugar-Sweetened Beverages
BMJ:メキシコの加糖飲料税導入後の購入量研究
WHO:2016年の加糖飲料課税に関する提言
英国政府:2018年の清涼飲料産業税施行
WHO:世界の飲料課税データ、2026年1月の発表
砂糖税の効果は出てるの?
加糖飲料の販売量が減ったり、メーカーが商品の糖分を減らしたりする効果は、複数の研究で確認されています。
2023年に発表されたイングランドの研究では、砂糖税がなかった場合の推計と比べて、10〜11歳の女子の肥満率が低かったと報告されています。一方、同年代の男子や4〜5歳の子どもでは、同様の改善は確認されませんでした。
参考:Rogersら、2023:英国の加糖飲料税と子どもの肥満率の関連
これは健康への効果を期待できる結果ですが、税以外の政策や生活の変化が影響した可能性もあり、砂糖税だけの効果と断定はできません。
現時点では、
「購入量や商品の糖分を減らす効果は比較的よく確認されており、健康面でも改善を示す研究が出ている。ただし、効果は年齢や制度によって異なり、長期的な検証も必要」
ということが言えそうですね。
砂糖税のメリットは?
では、実際に課税すると、どういったメリットがあるのでしょうか。
甘い飲み物を買う量が減る
2022年に公表された研究では、砂糖税に関する86件の研究を検討し、そのうち62件をメタ解析に使用しました。
その結果、課税は加糖飲料の販売量の平均15%減少と関連していました。
Andreyevaら、2022:加糖飲料課税の系統的レビュー・メタ解析
ただし、この数字には、国や地域、税率の違いがあります。
「砂糖税を導入すれば、どの国でも必ず15%減る」という意味ではありません。
また、ここで見ているのは主に販売量です。
「販売量が15%減った」
「砂糖の摂取量が15%減った」
「肥満の人が15%減った」
この3つは、それぞれ別の話です。
甘い飲み物を買わなくなった分、お菓子を多く買うなど考えられますからね。
飲み物に含まれる糖分が減る
砂糖税の効果は、買う人が減ることだけではありません。
英国の制度は、飲料に含まれる糖分の濃度によって税負担が変わります。
そのため、メーカーには「糖分を減らして、課税対象から外そう」という動機が生まれます。
消費者がいつもの商品を選んでいても、その商品の糖分が以前より少なくなっている場合があるわけです。
英国政府によると、制度の対象となる清涼飲料カテゴリーの平均糖分量は、2015〜2024年に47%減少しました。
英国政府:制度見直しと糖分削減の実績
もちろん、これは国民全体の砂糖摂取量が47%減ったという意味ではありません。
また、糖分を減らす方法には、甘さを控えるだけでなく、甘味料への置き換えなどもあります。
それでも、税金の仕組みが、メーカーのレシピ変更を促し得るという点は、食品を考えるうえで興味深いところです。
砂糖税のデメリット・課題
家計への負担をどう考えるか
単純に価格が上がれば、買う人の負担は増えます。
大人は我慢できますが、子供がいる家庭は甘い飲み物を買わざるを得ないでしょう。
そして払った税金は何に使われるのか。単なる家計の負担で終わらせない仕組みづくりが大切です。
「健康のためだから負担は問題ない」と片づけず、誰が負担し、誰に利益が届くのかを考えたいところです。
対象外の商品や地域に移る可能性
一部の飲料だけを課税対象にすると、別の甘い飲料へ切り替わる可能性があります。
例えば、カフェなどでその場で作る飲料は対象外とされています。
単純に甘い飲み物をスーパーで買わず、お店で飲む人が増えるだけかもしれません。
まあカフェのドリンクはスーパーほど安くはできないので、大丈夫だとは思いますが。
また、自治体単位の課税では、隣の非課税地域で購入する行動も論点になります。
砂糖税のない地域でまとめ買い、ということですね。実際の研究結果は地域によって異なります。
税率が低いと、効果も限られる
価格の変化が小さければ、購入行動を変える力も小さくなります。
例えば、日本でペットボトルはプラス10円、でやったとしてもあまり効果は出ないでしょう。
このように、一定額を課す制度では、物価や所得が上がるにつれて、税の相対的な重みが薄れることがあります。
やるなら砂糖の量に応じた累進課税的なやり方が効果的だそうです。
糖分濃度に応じて税額を変える方式は、メーカーの糖分削減を促す仕組みです
WHOも、低い税率や対象の狭さ、インフレ調整の不足を課題として挙げています。
WHO:世界の飲料課税データ
日本でも砂糖税は導入される?
2026年10月時点で、日本で健康対策としての砂糖税の導入が決まったという政府発表は、確認できませんでした。
ただし、これまでに提案がなかったわけではありません。
2015年に厚生労働省の有識者懇談会がまとめた「保健医療2035提言書」では、医療などを支える財源を確保する方法として、たばこ・アルコール・砂糖など、健康リスクに着目した課税も検討すべきという考えが示されています。
参考:厚生労働省「保健医療2035提言書」
一応提言はされているようですね。
ただしこれを受けて政府が検討しているという報道はありませんでした。
最後に
砂糖税は、砂糖を食生活から追い出すための政策ではありません。
甘い飲み物などの摂りすぎを減らすため、国民の健康に向けた課税です。
甘いものを楽しむことと、摂りすぎを防ぐこと。
その両立に税金がどこまで役立つのか、制度の中身と実際の効果を見ていきたいところです。
個人的には砂糖税はアリだと思いますね。個人の消費を抑えるというより、メーカーが甘くなくても美味しいドリンクをどんどん出してくれるようになるのが良さそうだと感じました。
とは言え、もし導入するならなんかの税金無くしてくれ!


