甘くてやわらかい焼き芋。
胃腸にもやさしそうですが、「消化がいい食べ物か」と聞かれると、そうともいえません。
一方で、さつまいもには「食物繊維が豊富で、お腹によさそう」というイメージもあります。
消化に悪いのに、腸にはいい。なんだか矛盾しているようですが、「消化されにくい成分が、その先の腸でどう働くか」を考えると、この違いが見えてきます。
今回は、焼き芋の消化と腸の関係を中心に、食べるときの注意点などを栄養士の視点で整理します。
焼き芋は、消化のよい食品とはいえない

まず結論からいうと、焼き芋は「消化のよい食品」とはいいにくい食べ物です。
焼き芋はしっとりとやわらかく、口の中でも簡単につぶれます。ただ、食感がやわらかいことと、消化されやすいことは同じではありません。
国立がん研究センター東病院が公開している消化器術後の食事資料でも、さつまいもは、ごぼうやきのこなどとともに「消化の悪い食品」に分類されています。
参考:国立がん研究センター消化に良いもの悪いもの
消化に悪い1番の理由は食物繊維。
さつまいもには、人の消化酵素では分解できない食物繊維が豊富に含まれています。
加熱してやわらかくなったからといって、これらがすべて消化できるようになるわけではないのです。
でも、「消化に悪い=体に悪い」ではない
「消化に悪い」と聞くと、なんとなく体によくないものに感じますよね。
ところが、私たちが普段「積極的にとりたい」といわれる食物繊維は、そもそも人の消化酵素では消化されない成分です。

食べ物に含まれるでんぷんなどは、消化酵素で分解され、小腸で吸収されます。
一方、食物繊維は小腸で消化されず、大腸まで届きます。そこで便の材料になったり、腸内細菌に利用されたりします。
つまり、「消化されないから役に立たない」のではなく、消化されずに届くからこそ、働ける場所があるということです。
自分で消化できなくても、腸内細菌が利用できる

大腸には、さまざまな腸内細菌がすんでいます。その一部は、私たちが消化できなかった食物繊維などを栄養源として利用します。
焼き芋に含まれる成分では、食物繊維に加え、レジスタントスターチも関係します。
レジスタントスターチは、日本語で「難消化性でんぷん」。でんぷんのうち、小腸での消化を免れて大腸まで届くものを指します。さつまいもにも含まれ、その量は調理や保存の条件によって変わります。
ただし、食物繊維なら何でも同じように発酵するわけではありません。成分の種類や、その人の腸内細菌によっても利用され方は変わります。
腸内細菌がつくる「短鎖脂肪酸」とは?

腸内細菌がこうした成分を発酵させると、酢酸・プロピオン酸・酪酸などの短鎖脂肪酸がつくられます。
少し難しい名前ですが、腸内細菌が食物繊維などを利用して生み出す物質、と考えるとわかりやすいでしょう。
これらは大腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑えるなど、腸内環境に関わる働きをしています。
もちろん、焼き芋だけを食べれば腸内環境が整うわけではありません。穀類や豆類、野菜、果物などとあわせて、食物繊維をとる選択肢のひとつとして考えましょう。
おならやお腹の張りにも、発酵が関わる

「さつまいもを食べると、おならが出る」という話にも、腸内細菌が関係しています。
小腸で消化されなかった炭水化物が大腸で細菌に分解されると、ガスが発生することがあります。
腸内細菌の餌になることと、お腹が張ることは、両立するのです。
とはいえ、張りや痛みを我慢してまで食べる必要はありません。「腸にいいはずだから」と量を増やすより、自分が無理なく食べられる量を探すことが大切です。
胃腸への負担を抑えたいときには注意
ここまで読んで、「消化されにくいけど、健康にいいならたくさん食べたほうがいいのでは?」と思った方もいるかもしれません。
消化に悪いということは身体に負担がかかるということです。
体調や胃腸の調子が悪いときは、分けて考える必要があります。
風邪の時や、特に消化器の手術後などは、消化のよい食品を中心にして、消化の悪いものは少量にとどめる食事指導が行われます。
治療中で食事の指示がある場合は、そちらを優先してください。「腸によい食品」という一般論だけで判断しないことが大切です。
冷やすと痩せる?栄養や食べ方の疑問も整理

「焼き芋は冷やして食べると太りにくい」こんなこと聞いたことないでしょうか?
冷やすとレジスタントスターチは増える?
加熱したでんぷんは、冷やすことで一部が消化されにくい構造(レジスタントスターチ)に変わることがあります。
調理後と24時間冷蔵後でレジスタントスターチ量を比べた研究があります。
| 調理方法 | 調理直後 | 冷蔵後 |
|---|---|---|
| 茹で | 6.17% | 7.32% |
| 蒸し | 5.45% | 6.27% |
| 焼き | 3.06% | 3.51% |
参考:さつまいもの加熱調理直後、冷蔵保存及び再加熱によるレジスタントスターチ量の変化
確かにどの調理法でも冷やせばレジスタントスターチは増えています。
…ただし、微量ですね。本当にカロリーオフになっているのでしょうか。
試しにざっくり計算してみましょう。
通常のでんぷんを約4kcal/g、RSを食物繊維と同様に仮に2kcal/gとして扱います。
焼き芋1本(約200g)は約302kcalです。冷やすことにより1%前後RSが増える実験結果になっています。
つまり24時間冷やすと、2gがレジスタントスターチに変わったので、焼き芋1本あたり約4kcalのカロリーオフに成功したということです。
あくまでざっくり計算ですが、たいしたダイエット効果は期待できないとお分かりいただけたと思います。
冷やし焼き芋は、食べ方の選択肢として楽しむくらいで十分です。
「冷やしたから、たくさん食べても大丈夫」とは考えないようにしましょう。
ダイエットでは「追加」より「置き換え」を考える
それでも焼き芋をダイエットとして取り入れるなら、いつものお菓子や主食との置き換えで考えるのがおすすめです。
腹持ちも良いため、ケーキやスナック菓子を食べる代わりにすれば満足感を残しつつカロリーオフを狙えます。
ただし、食物繊維を含むことと、血糖値が上がらないことは別です。
焼き芋には吸収される糖質もあり、血糖への影響は調理法や食べる量などで変わります。
健康によさそうだからと、普段の食事に大きな焼き芋を追加するよりも、「今日はおやつを焼き芋にする」「主食の一部を焼き芋にする」と考えてみてください。
まとめ
焼き芋は、消化のよい食品とはいえません。
でも、消化されにくい成分を含むことが、そのまま健康上の欠点になるわけではありません。
小腸で消化されずに届いた成分が、大腸で腸内細菌に利用される。そこに、食物繊維などを食事からとる意味があります。
普段は食物繊維を補う食品として取り入れ、胃腸への負担を抑えたいときには量を控える。体調と食べる量に合わせて、焼き芋を楽しみましょう。





